棚板にひびが入った、引き出しが引っかかる、椅子ががたつく。暮らしていれば誰にでも起こる小さなトラブルですが、これをフランス語で言おうとした瞬間に言葉が出てこない、という経験はありませんか。
教科書には「机」「椅子」は載っていても、「板が反った」「ネジがゆるんだ」はほとんど載っていません。ところがフランスでは、家具が壊れたときにまず自分の手で直そうとする人がとても多く、この語彙こそ生活に直結します。
この記事を読み終えると、症状の伝え方、作業の動詞、工具と資材の名前、ホームセンターでの買い物、職人への依頼までが一本の線でつながります。初級の文法しか使っていない短い会話を土台にしているので、覚えた翌日から口に出せます。体系的に学び直したい方はフランス語教室のような場で会話練習と組み合わせると、単語が定着しやすくなります。
では、そもそも家具修理のフランス語はどこから手をつければいいのでしょうか。まずは全体の地図を描いておきます。
家具修理のフランス語は「症状・動作・部品」の三層で覚える
- 語彙は「症状(どう壊れたか)」「動作(何をするか)」「部品(何を使うか)」の三層に分けると混乱しない
- 修理の会話は「原因の振り返り→解決策の提案→作業の宣言→買い物の相談」の四拍子で進む
- 最初に覚えるべき核は planche(板)、épaisseur(厚さ)、vis(ネジ)の三語
- 単語帳の順番ではなく、実際の作業の流れに沿って覚えるほうが口から出やすい
家具修理の語彙は、症状・動作・部品の三層に分けて整理するのが最短の道です。やみくもに単語を並べて暗記しようとすると、名詞の性も動詞の使い分けも頭の中でからまってしまいます。
理由は単純で、実際の修理がこの順番で進むからです。まず症状に気づき(ひびがある)、次に動作を決め(外して交換する)、最後に部品と工具を用意する(板とネジとドライバー)。言葉の並びが行動の並びと一致していれば、思い出す手がかりが増えます。
たとえば「棚板のひび」という一場面を取り上げると、症状層に fissure(ひび)、動作層に enlever(外す)と remplacer(交換する)、部品層に planche(板)と vis(ネジ)が同時に出てきます。三つの層をセットで覚えれば、一つの単語を思い出すと残りも連鎖的に出てきます。
つまり、この記事もその三層の順番で進みます。まずは実際の会話を丸ごと眺めて、三層がどう混ざり合っているかを確認してみましょう。
棚板のひび割れをめぐる会話で全体像をつかむ
- 会話は「症状の指摘→後悔→提案→作業宣言→買い物」という自然な流れで構成されている
- 使われている文法は条件法過去、大過去、代名詞 y など初級後半の範囲
- 型として丸ごと覚えると、家具以外の修理場面にも応用できる
最初に短い会話を丸ごと読んでしまうのが効率的です。単語を個別に覚えるより、会話の流れの中で見たほうが、どの語がどの位置に来るのかが体で分かります。
以下は、棚にひびが入っていることに気づいた場面のやりとりです。話し手は「ポリーヌ」「アルノー」という役名で、教材上の登場人物として扱ってください。
- フレーズ
- Pauline : Il y a des fissures dans la planche.
Arnaud : Ah, je n’aurais pas dû laisser des livres à la verticale pendant longtemps.
Pauline : On peut enlever cette planche et la remplacer par la nouvelle planche.
Arnaud : Je vais dévisser.
Pauline : Tu as acheté où cette planche ?
Arnaud : Dans le magasin à côté.
Pauline : On peut y aller tout à l’heure.
Arnaud : Oui. - 日本語訳
- ポリーヌ「板にひびがあるわ」
アルノー「あっ、長い間、本を垂直に置くべきじゃなかったよ」
ポリーヌ「この板を外して、新しいものに代えることができるわ」
アルノー「ねじを外すよ」
ポリーヌ「この板はどこで買ったの?」
アルノー「近くのお店で」
ポリーヌ「後で行けるわ」
アルノー「そうだね」 - 使う場面
- 家族や同居人と、家の中の不具合を見つけて対処を相談するとき。自分が気づいた側でも、指摘された側でも、そのまま使えます。
- 注意点
- remplacer の後は par です。avec としないよう気をつけます。また Tu as acheté où …? は口語的な語順で、書き言葉では Où as-tu acheté … ? となります。
- 発音・ニュアンス
- fissure は「フィスュール」。planche は「プランシュ」で語末の che をはっきり出します。dévisser は「デヴィセ」。je vais dévisser は、これから取りかかるという軽い宣言で、相手の許可を求める響きはありません。
会話はここで終わりません。二人は1時間後に近くの店へ出かけます。その続きも見てみましょう。
- フレーズ
- (1 heure plus tard)
Pauline : Il y a plusieurs sortes de planches.
Arnaud : Oui. J’avais mesuré l’épaisseur. C’est celle-là. Tu n’as besoin de rien ? On va à la caisse ?
Pauline : Attends, on va acheter une ampoule.
Arnaud : Oui, c’est vrai. On va acheter des vis aussi.
Pauline : Oui. - 日本語訳
- (1時間後)
ポリーヌ「いろんな種類の板があるわね」
アルノー「うん。厚さをはかっておいた。これだ。何もいらない?レジに行く?」
ポリーヌ「待って、電球を買うわ」
アルノー「あっ、そうだね。ネジも買おう」
ポリーヌ「そうね」 - 使う場面
- 売り場で商品を選び、買い忘れがないか確認してレジへ向かうまでの一連のやりとり。DIY店だけでなくスーパーでも同じ言い方が通用します。
- 注意点
- C’est celle-là. の celle は planche が女性名詞だから選ばれた形です。板ではなく釘(un clou)を指すなら C’est celui-là. になります。
- 発音・ニュアンス
- épaisseur は「エペスール」。caisse は「ケス」で、casse(壊れる)と混ざらないよう母音を意識します。On va à la caisse ? は語尾を上げるだけで疑問文になる、最も気軽な誘い方です。
短いやりとりですが、原因の振り返り、解決策の提案、作業の宣言、買い物の相談という流れが自然に入っています。修理の会話は基本的にこの四拍子で進むので、型として覚えてしまうと応用が利きます。
では、この四拍子の最初の一拍、「症状を伝える」表現をもっと厚くしていきましょう。ここが言えないと会話が始まりません。
症状別に覚える「どこがどう壊れたか」の表現
- 症状は「割れ」「反り・たわみ」「ゆるみ・がたつき」「音と動きの不調」「全体の劣化」の5系統で整理する
- Il y a … と C’est … の二つの枠に単語を差し替えるだけで大半の症状が言える
- 最も便利な一言は C’est réparable ?(これ、直せる?)
修理の会話は、症状を正確に言えるかどうかでほぼ決まります。動詞をたくさん知っていても、どこがどう壊れたかを伝えられなければ、相手は何をすればいいのか分かりません。
症状の言い方には規則性があります。多くは「Il y a + 名詞」か「主語 + être + 形容詞」か「主語 + 代名動詞の複合過去」のどれかに収まります。この三つの枠を用意して、名詞と形容詞を差し替えていくのが実戦的です。
割れ・ひび
ひび割れの中心語は une fissure(ひび割れ)と une fente(裂け目、隙間)です。表面の細い線状のものが fissure、板が実際に分かれてしまった隙間が fente というイメージで使い分けます。
- Il y a des fissures dans la planche.(板にひびがある)
- Le bois s’est fendu.(木が割れてしまった)
- La planche est fissurée sur toute la longueur.(板が全長にわたってひび割れている)
- Le pied s’est cassé net.(脚がぽっきり折れた)
反り・たわみ
湿気や重みで板が変形する現象です。日本語の「反る」「たわむ」「垂れる」を、フランス語では別の動詞で言い分けます。
- La planche s’est voilée.(板が反ってしまった)
- Elle a gauchi.(ねじれてしまった)
- L’étagère plie sous le poids des livres.(棚が本の重みでたわんでいる)
- Elle s’affaisse au milieu.(真ん中が垂れ下がっている)
ゆるみ・がたつき
家具の不具合で最も多いのがこの系統です。ネジのゆるみは代名動詞 se desserrer で表します。
- Cette étagère bouge un peu.(この棚、少し動く)
- La table est bancale.(テーブルががたつく)
- Les vis se sont desserrées.(ネジがゆるんだ)
- Ça ne tient plus.(もう固定されていない)
- Il manque une vis.(ネジが一本足りない)
音と動きの不調
きしむ、引っかかる、外れるといった動的な症状です。扉や引き出しのトラブルはここに集まります。
- La porte du placard grince.(戸棚の扉がきしむ)
- Le tiroir est coincé.(引き出しが引っかかって動かない)
- La charnière est cassée.(蝶番が壊れている)
- La poignée s’est détachée.(取っ手が取れてしまった)
- La glissière ne coulisse plus.(引き出しレールが滑らなくなった)
全体的な劣化
経年による傷みは abîmé(傷んだ)が万能です。表面の状態を細かく言うなら、以下の表現を足します。
- Le meuble est abîmé.(家具が傷んでいる)
- Le vernis s’écaille.(ニスが剥がれている)
- C’est rayé.(傷がついている)
- Le bois a pris l’humidité.(木が湿気を吸ってしまった)
C’est foutu.(もうダメだ)は日常でよく耳にしますが、かなりくだけた口語です。店員や職人、初対面の相手に向けて使うと品のない印象を与えます。フォーマルな場面では Ce n’est pas réparable. や Il faut le changer. に置き換えてください。
そして症状を伝えたあと、必ず役に立つ一言が C’est réparable ?(これ、直せる?)です。相手が家族でも職人でも、この短い疑問文一つで会話が次の段階へ進みます。
- フレーズ
- Regarde, il y a une fissure ici. Tu crois que c’est réparable ?
- 日本語訳
- 見て、ここにひびがある。これ、直せると思う?
- 使う場面
- 同居人や友人に不具合を見せて、対処方針を一緒に考えたいとき。Regarde で相手の視線を引き、症状、判断の依頼という三段構えです。
- 注意点
- Regarde は tu に対する命令形です。店員など vous で話す相手には Regardez となります。親しさの度合いで語形が変わる点に注意します。
- 発音・ニュアンス
- réparable は「レパラブル」。語末の ble は軽く添える程度で十分です。Tu crois que … ? を前に置くと、断定を避けた柔らかい問いかけになります。
症状が言えるようになったら、次は行動です。ここでフランス語らしい語の作り方が顔を出します。
作業を表す動詞と接頭辞 dé- の仕組み
- 接頭辞 dé- は「逆の動作」を作るので、visser / dévisser のように対で覚えると語彙が倍になる
- serrer(締める)と tourner(回す)は意味が違う。締結は必ず serrer
- 「直す」は réparer、arranger、dépanner、bricoler、restaurer で場面が分かれる
動作の動詞は、必ずペアで覚えるのが効率的です。会話に出てきた dévisser(ネジを外す)は、visser(ネジで留める)に接頭辞 dé- が付いた形にすぎません。
この dé- は「逆の動作」「取り去る」を表す部品で、家具修理の語彙全体を貫いています。serrer に付けば desserrer(ゆるめる)、monter に付けば démonter(分解する)、coller に付けば décoller(剥がす)。一つ覚えれば二つ手に入る構造です。
実際の作業で使う動詞を、意味と用例で並べます。声に出しながら、対になる語を意識してください。
- visser / dévisser(ネジを留める/外す): Je vais dévisser les équerres.(金具のネジを外すね)
- serrer / desserrer(締める/ゆるめる): Il faut serrer les vis de temps en temps.(時々ネジを締めないといけない)
- monter / démonter(組み立てる/分解する): On démonte l’étagère d’abord.(まず棚を分解しよう)
- fixer(固定する): On fixe la planche au mur.(板を壁に固定する)
- enlever / retirer(取り外す): On peut enlever cette planche.(この板を外せる)
- remplacer(交換する): Je la remplace par une neuve.(新しいものに取り替える)
- mesurer(測る): J’ai mesuré l’épaisseur.(厚さを測った)
- couper / scier(切る/のこぎりで切る): Tu peux scier à 80 cm.(80センチで切って)
- percer(穴をあける): Je perce un trou ici.(ここに穴をあける)
- enfoncer(打ち込む): Il faut enfoncer ce clou.(この釘を打ち込まないと)
- clouer(釘で打つ): On cloue le fond du tiroir.(引き出しの底を釘で留める)
- coller / recoller(接着する/貼り直す): Je recolle le pied avec de la colle à bois.(木工用ボンドで脚を貼り直す)
- poncer(やすりをかける): Ponce bien avant de vernir.(ニスを塗る前によくやすりをかけて)
- reboucher(穴やひびを埋める): Je rebouche la fissure avec du mastic.(パテでひびを埋める)
- réparer(修理する): Tu peux réparer ça ?(これ直せる?)
serrer と tourner の混同は学習者に非常に多い誤りです。「ネジを締める」は必ず serrer を使います。tourner は単に「回す」という動作を指すだけで、締結して固定するという意味を含みません。Tourne la vis. と言われた相手は「回せばいいのか、どちら向きに?」と戸惑います。
「直す」の五つの顔
日本語の「直す」に当たる動詞は複数あり、作業の性質で選びます。ここを押さえると表現が一段細やかになります。
réparer が最も広く使える「修理する」。arranger は「なんとか具合よくする、調整する」で、Je vais t’arranger ça.(それ、なんとかしておくよ)のような軽い修繕に向きます。dépanner は動かなくなったものを応急的に復旧させる響きで、困っている人を助ける意味にも転用されます。
bricoler は「日曜大工をする、自分で手を加える」。J’ai bricolé une étagère avec des chutes de bois.(端材で棚を自作した)のように使います。本格的な修復には restaurer を使い、remettre à neuf(新品同様にする)という言い方も併せて覚えておくと便利です。

動作が言えるようになったところで、次は道具と部品の名前です。まずはこの分野の核になる三語を深く掘ります。
planche・épaisseur・vis という三つの核
- planche(板)は étagère(棚)や plateau(天板)と使い分ける
- 寸法は longueur・largeur・épaisseur の三点セットで覚え、すべて女性名詞
- vis は単数も複数も同形。語末の s を発音して /vis/ と読む
家具修理で最初に押さえるべきは、planche・épaisseur・vis の三語です。この三つが分かれば、売り場で商品を特定し、寸法を伝え、部品を買い足すという最低限の行動が完結します。
planche:板
planche は「板」を意味する女性名詞です。棚板、床板、木材としての板など、平たい板状のものを幅広く指します。
- フレーズ
- Tu penses que cette planche rentre dans la voiture ?
- 日本語訳
- この板、車の中に入ると思う?
- 使う場面
- DIY店で長い板材を買うとき、駐車場に戻る前に同行者と積載を相談する場面。答えは Oui, je pense. や Non, il faut la couper. などになります。
- 注意点
- rentrer は「戻る」だけでなく「(空間に)収まる」の意味でも使われます。ここでは「入るかどうか」の意味です。entrer に置き換えても通じますが、口語では rentrer が自然です。
- 発音・ニュアンス
- planche は「プランシュ」。an の部分は鼻に抜ける母音で、口を大きく開けずに響かせます。blanche(白い)と音が近いので、語頭の p と b を意識して区別します。
家具の文脈では、似た単語との区別が大切です。une étagère は棚そのもの(棚ユニット全体、あるいは一段の棚)、une planche は素材としての板、un plateau はテーブルやデスクの天板を指します。
「棚板を一枚足したい」なら Je voudrais rajouter une planche à l’étagère. のように言い分けます。店員に「棚が欲しい」と言えば棚ユニットを案内されますから、板だけ欲しいときは planche を使う必要があります。
planche は比喩表現も豊富です。une planche à découper(まな板)、une planche à repasser(アイロン台)、une planche à voile(ウィンドサーフィンの板)、une planche de surf(サーフボード)。水に仰向けで浮かぶことを faire la planche と言います。
舞台に立つことを monter sur les planches と表現するのも面白い言い方です。劇場の床が板張りだったことに由来し、俳優について語るときによく登場します。
épaisseur:厚さ
épaisseur は「厚さ」を意味する女性名詞で、形容詞 épais / épaisse(厚い)から派生しています。板材を買うときに最も重要な数値がこれです。
- フレーズ
- Pour ce produit, l’épaisseur est indiquée ici. — Merci. Je vais noter.
- 日本語訳
- この製品について、厚さはここに表示されてるわ。/ありがとう、メモするよ。
- 使う場面
- 売り場のラベルや値札を見ながら仕様を確認するとき。indiquée の代わりに écrite(書かれている)も使えます。
- 注意点
- épaisseur は女性名詞なので過去分詞は indiquée と e が付きます。母音で始まるため l’épaisseur とエリジオンし、性が見えにくくなる点に注意します。
- 発音・ニュアンス
- 「エペスール」。ss は濁らず s の音です。Je vais noter. は「メモしておく」という軽い宣言で、手帳を出す動作を伴うと自然です。
寸法を語るときは、次の三つをセットで押さえておくと売り場で困りません。la longueur(長さ)、la largeur(幅)、l’épaisseur(厚さ)。奥行きは la profondeur、高さは la hauteur です。
板材を注文するときは Il me faut une planche de 80 cm de longueur, 25 cm de largeur et 18 mm d’épaisseur.(長さ80センチ、幅25センチ、厚さ18ミリの板が必要です)のように、数字+de+寸法名の語順で並べます。
「厚さ何ミリですか」と尋ねるなら Quelle est l’épaisseur de cette planche ? または Elle fait combien d’épaisseur ? が自然です。後者の faire を使った言い方は口語で非常によく使われ、Ça fait 2 cm d’épaisseur. と答えます。
vis:ネジ
vis は「ネジ、ビス」を意味する女性名詞です。日本語の「ビス」はこのフランス語からそのまま入った言葉で、語源をたどるとラテン語の「ブドウのつる」に行き着きます。つるが巻きつく様子がネジ山のらせんに重なるわけです。
- フレーズ
- J’ai rangé des vis dans cette boîte. — D’accord, merci !
- 日本語訳
- ネジはこの箱に片付けたわ。/わかった、ありがとう!
- 使う場面
- 作業後に部品を片付けた場所を共有するとき。次回の作業で探し回らないための、生活に密着した一言です。
- 注意点
- vis は単数でも複数でも形が変わりません。une vis / des vis と冠詞だけで数を区別します。複数形にしようとして viss や vises と書くのは誤りです。
- 発音・ニュアンス
- 語末の s を発音して「ヴィス」と読みます。動詞 vivre や voir の活用形 je vis は「ヴィ」で s を読まないため、音で聞き分ける必要があります。
ネジ関連でよく使う周辺語彙も一緒に覚えてしまいましょう。un boulon(ボルト)、un écrou(ナット)、une rondelle(ワッシャー、座金)、une cheville(木ダボ、壁用アンカー)、un clou(釘)。
組み立て家具の袋には visserie と書かれていることがあり、これはネジ類一式を指す集合名詞です。部品が足りないときは Il manque de la visserie. と言えば通じます。
慣用表現の serrer la vis à quelqu’un は「誰かに対して手綱を締める、厳しく管理する」という意味。Ses parents lui ont serré la vis.(親が彼に厳しくあたった)のように使われます。工具の動作が人間関係の比喩になっている例です。
核となる三語を押さえたところで、周辺の道具と資材へ広げていきます。ここからは冠詞をセットで覚えるのが鍵になります。
工具と資材の名前は冠詞ごと音で覚える
- 工具名は男性名詞と女性名詞が混在するため、un / une を付けた音のかたまりで覚える
- 電動工具は -euse で終わる女性名詞が多い(perceuse、visseuse、ponceuse)
- un mètre は「1メートル」ではなく「巻尺」という道具を指すことがある
工具名は冠詞ごと音で覚えるのが早道です。男性名詞と女性名詞が入り混じっているため、単語だけ覚えると売り場で指示代名詞を使う瞬間に迷います。
幸い、電動工具にはヒントがあります。perceuse(ドリル)、visseuse(電動ドライバー)、ponceuse(サンダー)のように、動詞から作られた -euse で終わる語はすべて女性名詞です。この規則を知っておくと推測が効きます。
手工具
- un tournevis(ドライバー)※ tourner+vis の合成語。cruciforme(プラス)と plat(マイナス)を区別します
- un marteau(金づち)/un maillet(木づち)
- une pince(ペンチ)/une pince coupante(ニッパー)
- une clé(スパナ、レンチ)/une clé à molette(モンキーレンチ)/une clé hexagonale(六角レンチ)
- une scie(のこぎり)/une scie égoïne(手引きのこ)/une scie sauteuse(ジグソー)/une tronçonneuse(チェーンソー)
- un ciseau à bois(のみ)/une lime(やすり)/un rabot(かんな)
- un serre-joint(クランプ)/un étau(万力)
- une boîte à outils(工具箱)/un établi(作業台)
電動工具と測定具
- une perceuse(ドリル)/une visseuse(電動ドライバー)/une perceuse-visseuse(ドリルドライバー)
- une ponceuse(サンダー)
- un mètre / un mètre ruban(巻尺、メートル尺)
- un niveau à bulle(水平器)/une équerre(直角定規)/un crayon de charpentier(大工用鉛筆)
「メジャー貸して」は Tu peux me passer le mètre ? です。un mètre が単位の1メートルではなく道具を指すことを知らないと、不意に言われて戸惑います。作業中は道具の意味で使われることがに多いと考えてよいでしょう。
資材
- du bois massif(無垢材)/du contreplaqué(合板)/de l’aggloméré(パーティクルボード)/du MDF
- des tasseaux(角材)/des chutes de bois(端材)
- de la colle à bois(木工用ボンド)/du mastic à bois(木工パテ)
- du papier de verre(紙やすり)/その番手は le grain
- du vernis(ニス)/de la lasure(木材保護塗料)/de la peinture(塗料)
- une équerre de fixation(固定金具)/une charnière(蝶番)/une glissière de tiroir(引き出しレール)
資材は数えられない物質名詞が多く、部分冠詞 du / de la / de l’ を伴います。du contreplaqué と une planche de contreplaqué の違いを意識すると、売り場での言い方が安定します。
- フレーズ
- Passe-moi le tournevis cruciforme, s’il te plaît.
- 日本語訳
- プラスドライバーを取って。
- 使う場面
- 二人で作業していて、手が離せないときに道具を頼む場面。工具名を入れ替えるだけで何通りにも応用できます。
- 注意点
- 命令形では代名詞が動詞の後ろに来て、me は moi に変わります。Me passe … は誤りです。vous で話す相手なら Passez-moi … となります。
- 発音・ニュアンス
- tournevis は「トゥルヌヴィス」で語末の s を読みます。cruciforme は「クリュシフォルム」。s’il te plaît を添えると、作業中の慌ただしい場面でも角が立ちません。
道具が揃ったら、実は作業の前にもう一段階あります。フランスのDIY店で入口近くに並んでいる、あの棚の語彙です。
安全対策の語彙と作業開始の合言葉
- 保護具は des gants、des lunettes de protection のように複数形が基本
- 素材は前置詞 en で表す(des gants en cuir、des gants en caoutchouc)
- 作業開始の合図は On attaque !、結果を見守るときは On va voir ça.
安全に関わる語彙は、複数形が基本という特徴があります。手袋も保護めがねも二つで一組だからです。この一点を知っておくと、冠詞の選択に迷いません。
- des gants(手袋): 素材は en で表し、des gants en cuir(革手袋)、des gants en caoutchouc(ゴム手袋)。une paire de gants で「一組の手袋」
- des lunettes de protection(保護めがね): これも複数形。Tu dois mettre des lunettes pour couper du bois !(木を切るときはめがねをかけないと!)
- un casque(ヘルメット): 簡単な作業では不要でも、脚立に上がるときは安心。un casque antibruit は防音イヤーマフ
- un masque(マスク): やすり作業の粉じん対策に un masque anti-poussière
- un escabeau(脚立)/une échelle(はしご)
作業を始める合図としてよく使われるのが On attaque !(さあ始めよう!)です。attaquer は「攻撃する」以外に「取りかかる」の意味を持ち、料理でも仕事でも同じように使われます。
結果を見守るときの On va voir ça.(どうなるか見てみよう)も現場で頻出です。似た形の On verra. はもっと先の話を保留するときの表現で、On verra ça plus tard.(それはまた後で考えよう)のように使います。
On va voir ça. と On verra. は響きが大きく違います。前者は「今これから確かめよう」という前向きな姿勢ですが、後者は「その話はまた今度」という先送りに聞こえます。相手に見積もりや対応を頼んだ場面で On verra. と返されたら、態度を保留されたと受け取るのが自然です。
装備と合言葉が揃いました。では、材料を買いに出かける場面へ進みましょう。ここが実践の山場です。
ホームセンターでの会話を場面順に組み立てる
- 大型DIY店は un magasin de bricolage、小さな金物屋は une quincaillerie
- 「売り場を探す→現物を選ぶ→カットを頼む→会計」の四場面で表現を用意しておく
- 寸法のカットは le service de découpe、掛け合わせの読みは sur を使う
買い物の会話は場面順に暗記するのが確実です。単語を知っていても、どの順番で何を言うかが決まっていないと、売り場の前で固まってしまいます。
フランスには Leroy Merlin、Castorama、Brico Dépôt といった大型のDIY店(un magasin de bricolage)があり、木材から水栓、植木まで揃います。小さな金物屋は une quincaillerie で、細かい部品を一つだけ買いたいときに便利です。

売り場を探す
- Excusez-moi, où est le rayon bois ?(すみません、木材コーナーはどこですか)
- Je cherche des vis pour du bois.(木ネジを探しています)
- C’est à quel rayon ?(何番の売り場ですか)
現物を選ぶ
- Il y a plusieurs sortes de planches.(板にはいろんな種類があるね)
- Laquelle vous me conseillez ?(どれがおすすめですか)
- C’est celle-là.(これだ)※ planche が女性名詞なので celle-là
- Vous avez la même en 18 mm ?(同じもので18ミリ厚はありますか)
カットを頼む
大型店にはカットサービス(le service de découpe)があります。自宅にのこぎりがなくても、寸法を伝えれば板を切ってもらえます。
- Vous pouvez me la couper en deux ?(半分に切ってもらえますか)
- Je voudrais une découpe sur mesure : 75 sur 30.(75×30の寸法でカットをお願いします)
- La découpe est payante ?(カットは有料ですか)
会計と付帯
- On va à la caisse ?(レジに行く?)/Je passe à la caisse.
- Tu n’as besoin de rien ?(何もいらない?)
- Vous payez comment ?(お支払いは?)— Par carte.(カードで)
- Je peux avoir un sac ?(袋をもらえますか)
- Ça rentre dans la voiture ?(車に入るかな)
- Vous faites la livraison ?(配達はしていますか)
- Si ça ne va pas, je peux l’échanger ?(合わなければ交換できますか)
- フレーズ
- 学習者 : Bonjour, je cherche une planche pour une étagère. Il me faut 80 sur 25, en 18 mm d’épaisseur.
店員 : Oui, on a ça en contreplaqué ou en aggloméré. Vous préférez quoi ?
学習者 : Laquelle est plus solide ?
店員 : Le contreplaqué. Je vous la coupe ?
学習者 : Oui, s’il vous plaît. La découpe est payante ?
店員 : Les deux premières coupes sont offertes. - 日本語訳
- 学習者「こんにちは、棚用の板を探しています。80×25で厚さ18ミリのものが必要です」
店員「はい、合板かパーティクルボードでございます。どちらがよろしいですか」
学習者「どちらが丈夫ですか」
店員「合板です。お切りしましょうか」
学習者「はい、お願いします。カットは有料ですか」
店員「最初の2カットは無料です」 - 使う場面
- 木材売り場で店員に相談しながら板を買う場面。料金体系は店舗や時期によって異なるため、必ずその場で確認してください。
- 注意点
- Laquelle は planche を受けた女性単数形です。材質(le contreplaqué、l’aggloméré)を受けるなら Lequel になります。何を指しているかで形が変わる点に注意します。
- 発音・ニュアンス
- 80 sur 25 は「キャトルヴァン スュール ヴァンサンク」。découpe は「デクープ」。店では必ず Bonjour から始めるのが礼儀で、これを省くと無礼に受け取られます。
原稿の会話で二人が電球を買い足しているのも現実的です。une ampoule は「電球」ですが、同じ語で「(手足の)水ぶくれ」も意味します。作業のしすぎで J’ai une ampoule au doigt.(指に水ぶくれができた)となることもあるので、文脈で判断します。
une ampoule LED、un culot à vis(ねじ込み口金)、un culot à baïonnette(差し込み口金)といった言い方も、売り場では知っていると役立ちます。口金の形が合わないと取り付けられないため、現物か型番を持参するのが確実です。
とはいえ、すべてを自分で直せるわけではありません。手に負えないときの言い方も用意しておきましょう。
自分で直せないときの依頼と見積もりの表現
- 職種名を知っておく(menuisier、ébéniste、tapissier、serrurier)
- 見積もりは un devis。無料か確認する一言を必ず添える
- faire + 不定詞の使役表現で「修理してもらう」を表す
依頼の場面では、職種名を正しく選ぶことが最初の一歩です。頼む相手を間違えると、話が通じないまま時間だけが過ぎてしまいます。
un menuisier は建具や木部を扱う木工職人、un ébéniste は家具製作・修復の専門家、un tapissier は椅子やソファの張り替え職人、un serrurier は鍵と錠、un plombier は配管です。古い箪笥の修復なら ébéniste、扉の建て付けなら menuisier が窓口になります。
依頼の会話で使う表現を並べます。どれも丁寧形で、そのまま電話や店頭で使えます。
- J’ai un meuble à faire réparer.(修理してもらいたい家具があります)
- Est-ce que vous réparez ce genre de meuble ?(こういう家具の修理はされていますか)
- Vous pouvez me faire un devis ?(見積もりをお願いできますか)
- Le devis est gratuit ?(見積もりは無料ですか)
- Ça coûterait combien, à peu près ?(だいたいいくらくらいになりますか)
- J’aimerais savoir combien de temps la réparation prendra environ.(修理にどのくらいかかるか知りたいのですが)
- C’est encore sous garantie.(まだ保証期間内です)
- Vous pouvez venir à domicile ?(出張してもらえますか)
- Il faut commander la pièce.(部品を注文する必要があります)
家具を買った店に連絡するなら J’ai acheté cette étagère chez vous le mois dernier, et une planche est fissurée.(先月こちらで買った棚ですが、板にひびが入っています)のように、購入時期と症状を先に述べるとスムーズです。
- フレーズ
- Bonjour, j’ai une commode ancienne dont un tiroir est coincé. Est-ce que vous réparez ce genre de meuble ? Et vous pouvez me faire un devis ?
- 日本語訳
- こんにちは、引き出しが引っかかる古い箪笥があります。こういう家具の修理はされていますか。それと、見積もりをお願いできますか。
- 使う場面
- 工房や修理業者に初めて問い合わせるとき。家具の種類、症状、対応可否、見積もりの順で述べると相手が判断しやすくなります。
- 注意点
- je veux un devis と言うと要求が強く響きます。Vous pouvez me faire … ? や Je voudrais … の形にすると穏やかです。金額や期間は個々の状況で変わるため、必ず書面で確認してください。
- 発音・ニュアンス
- devis は「ドゥヴィ」で語末の s を読みません。前述の vis(ヴィス)と対照的です。commode は「コモッド」で、形容詞の「便利な」と同じ形です。
ここまでで実務的な表現はほぼ揃いました。次に、なぜフランスでこの語彙が生活語になっているのか、その背景に触れておきます。文化が分かると単語の定着が早くなります。
bricolage が生活に根づいている背景
- le bricolage(日曜大工)は動詞 bricoler、人を指す bricoleur / bricoleuse と一組で使う
- 説明書は la notice または le mode d’emploi。図だけのものが多い
- 工具にちなんだ慣用句が多く、語彙が比喩表現の理解にもつながる
フランス語の le bricolage は日曜大工・DIY全般を指し、動詞と人を表す名詞まで一組で使われます。Il est très bricoleur. は「彼は手先が器用でなんでも自分で直す」という褒め言葉です。
賃貸住宅で棚や照明を自分で取り付けるのが当たり前という事情もあり、週末に工具を持ち出す人は性別を問わず多いです。だからこそ、この分野の語彙は日常会話に自然に登場します。
組み立て家具に付いてくる説明書は la notice または le mode d’emploi。図だけで文字がほとんどないことも多く、Il n’y a que des dessins.(絵しかない)と苦笑しながら組み立てる場面は各家庭でおなじみです。
Montre-moi la notice, s’il te plaît.(説明書見せて)は、二人で作業するときの定番の一言です。組み立て途中で部品が余ったときの Il reste une pièce…(部品が一つ残ってる)という困惑も、どこの国でも同じでしょう。
古いものを直して使う文化も根強く、蚤の市(une brocante、un vide-grenier)で手に入れた家具に手を入れて使う人は少なくありません。日本の家具修復の工房がフランス語の restaurer を屋号に選ぶことがあるように、「修復」という言葉自体にこの言語が持つ職人文化のイメージが結びついています。
工具にちなんだ慣用句も生活の中から生まれました。le clou du spectacle は「催しの一番の見どころ」、ça ne vaut pas un clou は「一文の価値もない」、être marteau は「頭がおかしい」。修理の語彙を覚えると、こうした比喩表現の理解も一気に進みます。
文化的な背景が見えたところで、冒頭の会話に戻ります。あの短いやりとりには、初級後半の重要文法が驚くほど詰まっていました。
会話に隠れた文法ポイントを取り出す
- je n’aurais pas dû + 不定詞で「〜すべきではなかった」という後悔を表す
- remplacer A par B の前置詞は par。avec は誤り
- 大過去 J’avais mesuré は「あらかじめ済ませておいた」感じを出す
短い会話でも、文法の宝箱になっています。生活の場面に現れる形こそ、使用頻度が高い証拠です。一つずつ取り出して整理します。
je n’aurais pas dû + 不定詞(〜すべきではなかった)
条件法過去による後悔の表現です。Je n’aurais pas dû laisser des livres à la verticale. は「垂直に本を置いたままにすべきではなかった」。反省を語るときの定型です。
J’aurais dû mesurer avant d’acheter.(買う前に測るべきだった)のように不定詞を差し替えて練習すると身につきます。否定を外せば「〜すべきだった」になる点も押さえておきましょう。
remplacer A par B(AをBに取り替える)
前置詞は par です。英語の with につられて avec としないよう注意します。On remplace la planche par une neuve. が正しい形です。
なお「新しい」には neuf / neuve と nouveau / nouvelle があり、未使用で新品という意味なら neuf、単に別の新しいものという意味なら nouveau を使うのが目安です。
代名詞 y と tout à l’heure
On peut y aller tout à l’heure. の y は「そこへ」、つまり前述の「隣の店」を指します。場所を繰り返さずに済む便利な代名詞です。
tout à l’heure は「少し後で」「さきほど」の両方に使える時間表現で、動詞の時制で方向が決まります。未来形や aller の現在形と組めば「後で」、複合過去と組めば「さきほど」です。
ne … rien と avoir besoin de
Tu n’as besoin de rien ? は avoir besoin de の de と rien が結びついた形です。「何も必要ない?」という定型で、返事は Non, ça va. や Si, il me faut des vis. となります。
否定疑問に対して「いや、必要だ」と肯定で答えるときは oui ではなく si を使います。この si の使い方は会話で頻繁に必要になるので、ここで覚えてしまいましょう。
大過去(plus-que-parfait)
J’avais mesuré l’épaisseur. は「(店に来る前に)厚さを測っておいた」。過去のある時点より前に完了していた行為を示します。単純な J’ai mesuré より「あらかじめ済ませておいた」感じが強く出ます。
指示代名詞 celui / celle
C’est celle-là. は planche が女性名詞だから celle。板なら celle-là、釘(un clou)なら celui-là、複数なら ceux-là / celles-là。売り場で指さしながら使う頻度が高い形です。
性数一致と sortes de
L’épaisseur est indiquée ici. のように、épaisseur は女性名詞なので indiquée と e を付けます。寸法の語は la longueur、la largeur、la hauteur、la profondeur とすべて女性名詞なので、まとめて覚えると一致の判断が楽になります。
Il y a plusieurs sortes de planches. では、種類が複数あることを受けて planches が複数形になります。sorte de の後の名詞の数は、指している実体に合わせて決まると考えてください。
文法が整理できたところで、次は独学で陥りやすい落とし穴を一つにまとめます。ここを先に知っておくと、遠回りを避けられます。
つまずきやすい誤用と同形異義の整理
- 「留める」は visser・clouer・coller・fixer で手段が違う
- 名詞 vis と動詞形 visse は綴りも音も近いため役割で判断する
- cheville、rondelle、niveau、ressort は日常語と工具語の二つの顔を持つ
この分野には同形異義語が多く、それが誤解の温床になります。先に一覧で押さえておくと、実際の場面で立ち止まらずに済みます。
同じ「留める」でも、visser(ネジで留める)、clouer(釘で打つ)、coller(接着する)、fixer(固定する、総称)は動作が別です。壁に棚を取り付けるなら fixer が使え、その具体的手段として visser を選ぶという関係になります。
vis と visse の混同にも注意が必要です。名詞は vis(単複同形)、動詞 visser の一人称現在は je visse。綴りが近く、音も同じため、文中の役割で判断します。
une cheville は「木ダボ」「壁用アンカー」を指す一方、人体の「くるぶし」も同じ単語です。une cheville murale と言えば壁用のアンカーであることが明確になります。
une rondelle は工具文脈では「ワッシャー(座金)」で、料理では「輪切り」(une rondelle de citron)。同様に un niveau は「水平器」と「水準・レベル」、un ressort は「ばね」と「気力」の両義があります。
une tronçonneuse はチェーンソーで、木を伐るための大型工具です。家具の板を切る道具として店員に頼むと、話がまったく噛み合いません。金属を切る糸のこ状の工具は une scie à métaux、板を切る手引きのこは une scie égoïne です。
数字の読み方も実務では重要です。18 mm は dix-huit millimètres、2,5 cm は deux virgule cinq centimètres と小数点を virgule で読みます。長さの掛け合わせは 80 sur 30(80×30)と sur を使います。
フランスでは小数点をコンマで書く習慣があるため、2.5 ではなく 2,5 と表記されます。値札を読み違えないよう、この点も頭に入れておきましょう。
誤用の地雷を避けられるようになったら、いよいよ口に出す練習です。音の壁を越えていきます。
発音練習:音の落とし穴を三つに絞る
- 語末の s を読む語(vis、tournevis)と読まない語(devis、bois)を区別する
- 鼻母音(planche、charnière の an、ponceuse の on)を口を開けすぎずに響かせる
- u の音(épaisseur、mesurer、visseuse)は唇を丸めて前に出す
この分野の発音は、語末の sが最大の関門です。読む語と読まない語が混在し、しかも意味を分ける働きをしているからです。
読む語は vis(ヴィス)、tournevis(トゥルヌヴィス)、un os(骨)など少数派です。読まない語は devis(ドゥヴィ)、bois(ボワ)、prix(プリ)と大多数を占めます。vis と devis を並べて交互に言う練習が効果的です。
次の三組を、それぞれ5回ずつ声に出してみてください。口の形を意識すると、区別がはっきりしてきます。
- vis(ヴィス/ネジ)— je vis(ヴィ/私は生きる・見た)
- planche(プランシュ/板)— blanche(ブランシュ/白い)
- épaisseur(エペスール/厚さ)— épaisse(エペス/厚い)
鼻母音は planche の an、charnière の ar、ponceuse の on に現れます。日本語の「ン」で終わらせず、息を鼻に抜きながら母音を保つのがコツです。口を大きく開けると別の音になってしまうので控えめに。
u の音は épaisseur、mesurer、visseuse、découpe に含まれます。唇をすぼめて前に突き出し、舌は「イ」の位置に置くと近い音が出ます。日本語の「ウ」で代用すると ou(う)と混ざり、別の単語に聞こえることがあります。
文単位の練習には、次の三文がちょうどよい素材です。どれも実際の作業で使う形です。
- Il y a une fissure dans la planche.(板にひびがある)
- J’avais mesuré l’épaisseur avant de venir.(来る前に厚さを測っておいた)
- Vous pouvez me la couper en deux, s’il vous plaît ?(半分に切ってもらえますか)
音が固まってきたら、あとは定着させる仕組みです。一週間で回せる練習の流れを用意しました。
一週間で回す復習計画と練習問題
- 7日間で「症状→動作→部品→買い物→依頼」を一巡させる
- 家の中の家具を実際に測り、寸法をフランス語で書き出す作業が定着を助ける
- 最後に和文仏訳6問で自己チェックする
語彙を定着させる鍵は、実物と結びつけることです。机の上で単語を眺めるより、手元の家具を測ってフランス語で書き出すほうが記憶に残ります。

7日間の流れ
- 1日目:症状の表現を5系統から各1文選び、家の中で当てはまるものを探して声に出す
- 2日目:visser / dévisser のような dé- のペアを10組書き出し、対にして音読する
- 3日目:工具名に un / une を付けて音読。手元にある道具を指さしながら言う
- 4日目:本棚や机の longueur・largeur・épaisseur を実測し、フランス語の文で書き出す
- 5日目:ホームセンターの会話を、店員役と客役を一人で交互に演じて再現する
- 6日目:依頼の表現を使い、架空の修理依頼メールを5行で書いてみる
- 7日目:最初の会話を見ずに再現し、思い出せなかった語だけを書き留める
4日目の実測はぜひ試してください。自宅の棚が「厚さ18ミリ」だと知った瞬間、dix-huit millimètres d’épaisseur という音のかたまりが一気に自分のものになります。
和文仏訳6問
次の日本語をフランス語にしてみてください。解答例はその下にあります。まず書いてから確認するのが効果的です。
- 棚板に大きなひびがあります。
- このネジをゆるめて、板を外しましょう。
- 板の厚さを測っておきました。
- この板を新しいものに取り替えたいです。
- 木材コーナーはどこですか。
- 修理にどれくらい時間がかかりますか。
解答例です。表現は一通りではないので、意味が通れば別の言い方でも構いません。
- Il y a une grande fissure dans la planche de l’étagère.
- On desserre cette vis et on enlève la planche.
- J’avais mesuré l’épaisseur de la planche.
- Je voudrais remplacer cette planche par une neuve.
- Où est le rayon bois, s’il vous plaît ?
- Combien de temps prendra la réparation ?
仕上げの会話練習
- フレーズ
- 学習者A : La table est bancale. Les vis se sont desserrées, je crois.
学習者B : Passe-moi la clé hexagonale. On va serrer ça.
学習者A : Tiens. C’est droit maintenant ?
学習者B : Vérifie avec le niveau.
学習者A : Oui, ça tient bien. On range les outils ?
学習者B : Oui, on attaque le ménage ! - 日本語訳
- A「テーブルががたつく。ネジがゆるんだんだと思う」
B「六角レンチを取って。締めよう」
A「はい。これでまっすぐ?」
B「水平器で確かめて」
A「うん、しっかり固定されてる。工具を片付ける?」
B「うん、掃除に取りかかろう!」 - 使う場面
- 二人で作業を進め、確認して片付けるまでの一連の流れ。症状、道具の依頼、確認、後片付けが全部入った総合練習です。
- 注意点
- se sont desserrées の過去分詞は主語 les vis(女性複数)に一致して ées となります。代名動詞の一致は見落としやすい箇所です。
- 発音・ニュアンス
- bancale は「バンカル」。hexagonale は「エグザゴナル」で h は読みません。Tiens. は物を渡すときの「はい、どうぞ」で、日常でとてもよく使われます。
練習の場面が増えるほど、この語彙は生活の道具になっていきます。会話相手がいる環境で声に出すと、定着の速度はさらに変わってきます。
最後に、学習中によく挙がる疑問をまとめておきます。気になる項目から読んでください。
よくある疑問へのQ&A
- 単語の使い分け、名詞の性、発音に関する疑問を6問に整理
- 迷いやすい réparer と bricoler、planche と étagère の違いを確認できる
- どの語から覚えるべきかという優先順位の考え方も示す
réparer と bricoler はどう違いますか
réparer は壊れたものを元の機能に戻す「修理する」で、対象が明確に故障している場合に使います。bricoler は日曜大工として自分の手で何かを作ったり手を加えたりする行為全般を指し、必ずしも故障が前提ではありません。壊れた椅子を直すなら réparer une chaise、端材で棚を自作するなら bricoler une étagère となります。
planche と étagère はどちらを使えばいいですか
素材としての一枚の板は planche、棚という家具そのものや棚の一段は étagère です。テーブルやデスクの天板は plateau を使います。売り場で板だけを買いたいときに étagère と言うと棚ユニットを案内されることがあるため、Je cherche une planche pour mon étagère. のように両方を使って説明するのが確実です。
vis の複数形はどう書きますか
vis は単数でも複数でも綴りが変わらない単複同形の名詞です。une vis で一本、des vis で複数を表し、数の区別は冠詞が担います。viss や vises という綴りは存在しません。発音は語末の s を読んで /vis/ となり、単数複数で音も変わりません。
ネジを締めるときに tourner を使ってもいいですか
締めるという意味を伝えたいなら serrer を使ってください。tourner は単に「回す」という動作を指すだけで、固定するという結果を含みません。ゆるめる場合は desserrer、ネジを外して取り去る場合は dévisser を選びます。Serre bien les vis. なら「ネジをしっかり締めて」という明確な指示になります。
寸法を伝えるときの語順が分かりません
数字+de+寸法名の順に並べるのが基本です。une planche de 80 cm de longueur, 25 cm de largeur et 18 mm d’épaisseur のように続けます。口語では faire を使って Elle fait combien d’épaisseur ? と尋ね、Ça fait 18 mm d’épaisseur. と答える形も頻繁に使われます。二つの数値を掛け合わせる言い方は 80 sur 30 のように sur を挟みます。
家具の修理を頼むならどの職人に連絡すればいいですか
<p
十分です。手元の棚や机を一つ選び、その longueur・largeur・épaisseur を測って紙に書き出してみてください。それだけで三つの女性名詞が音として体に入ります。
次にネジを一本ゆるめて締め直しながら、desserrer と serrer を声に出す。この小さな動作の積み重ねが、売り場や職人の前で言葉が出てくるかどうかの差になります。
壊れた棚は、思いがけず実践的な教材になってくれます。次に家具が不調を起こしたときは、少しだけフランス語で状況を言ってみることから始めてみてください。

