フランスの暖房方法とは?暖房の使い方や気になる電気代も解説!

  1. フランス語会話・勉強

寒さの厳しいフランスでは、家全体を温める暖房方法がスタンダード。電気の使用量も夏より冬のほうが多いようです。冷房のために夏の電気消費量が多い日本とは逆なのが面白いですね。

今回はそんなフランスの暖房事情と電気について紹介します。

フランスの暖房方法とは?暖房の使い方や気になる電気代も解説!

暖房は電気?ガス?

まずはフランス在住の花子さんとマリーさんの会話を覗いてみましょう。それぞれの暖房方法に注目してくださいね。

会話

マリーさんの家にお邪魔した花子さん、家の暖かさにびっくりしています。

Hanako : Il fait très chaud chez toi !

あなたの家、とっても暖かいわ!

Marie : Oui, comme je suis très frileuse…

ええ、私、とても寒がりだから…

Hanako : Quel est ton moyen de chauffage ?

何で暖房しているの?

Marie : C’est du chauffage électrique.

電気暖房よ。

En hiver, ça nous fait de grosses factures en électricité …

冬は電気の請求書がとても高いのよ。

Hanako : J’imagine bien.

そうでしょうね。

Marie : A la maison de campagne, on chauffe au fioul. 

田舎の家では重油で暖房しているの。

A l’époque il était économique, mais maintenant…

昔は経済的だったけど、今はねぇ…

Hanako : Il n’y a pas de cheminée?

暖炉はないんだっけ?

Marie : Si, mais on n’as pas fait faire le ramonage. 

あるわよ。でも煙突掃除をしてもらってないの。

Du coup, on ne peut pas l’utiliser.

だから暖炉は使えないのよ。

Hanako : Chez moi, c’est au gaz. En plus c’est inclus dans le loyer.

我が家はガスよ。それに家賃に含まれているの。

Marie : C’est bien. Mais tu dois quand même faire attention à ta consommation.

それはいいわね。でも使いすぎないように気をつけなきゃね。

Le propriétaire peut te demander un supplément si tu consommes trop. 

もし暖房を使いすぎたら、家主に追加料金を請求されるかもよ。

ポイント

frileuse 寒がりの

frileuse」は形容詞「frileux 寒がりの」の女性形です。

日本人には聞き間違いやすい単語で「furieux / furieuse 激怒した」という単語があります。ぜんぜん意味が違うので、言い間違いや聞き取り間違いに注意してくださいね。

moyen de ~ 手段・方法

moyen」は「手段・方法」という意味ですね。

「どんな方法で~ ?」と聞きたいときは「Quel est le moyen de ~?」と言ってみましょう。「de」の後は名詞なら無冠詞名詞、動詞なら不定詞が続きます。

Quel est le moyen de paiement ?

お支払方法は?

Est-ce que vous avez un moyen d’aller jusqu’à l’aéroport ?

空港まで行く(交通)手段はありますか?

フランスの暖房方法

フランスの暖房方法

日本で暖房といえば、コタツやヒーター・エアコンなど。使っている部屋や局部的に温める暖房方法が主流ですよね。

反対にフランスでは、セントラルヒーティングを採用している場合が多く、家全体をほんわか暖める暖房が好まれるようです。空気を暖めるというより、壁を暖めるイメージでしょうか。

セントラルヒーティング

セントラルヒーティングはフランス語で「chauffage central」。「chauffage」は「暖房」、「central」は「中央の」という意味です。

chauffage central」といっても、暖房方法は一種類ではなく、何で何を暖めるかという違いがあります。

ガス暖房

フランスの「chauffage central」でメジャーなのは「chauffage au gaz ガス暖房」で、日本では給湯機として使われることが多いガスボイラーを使った暖房のこと。

gaz ガス」で暖めたお湯を、家中に巡らせた「tuyau 管」と「radiateur en fonte 鋳物の放熱機」の中を通し、家全体を暖める方法です。

tuyau」の設置などで工事が必要なことと、ある程度の初期投資が必要な方法なので、設置の手軽な電気暖房に取って代わられつつあります。

chauffage」自体の機械も大きく、設置に場所を取るため、狭い家には設置しにくいというデメリットもあります。

しかし空気を汚しにくい・ガス代のほうが電気代より安いなどのメリットもあるので、好んで選ぶ人も多いよう。アパートだと共益費に含まれることが多いのも、借家人には嬉しいですね。

【2022年1月より新築への設置が禁止に】

chauffage au gaz」はフランスでも人気の暖房方法ですが、環境保全の観点から一軒家かつ新築への設置が、2022年から法律で禁止されました。

ただし新築の一戸建てへの設置が禁止されただけで、それ以外の住居の場合は、機械の修理や新しいものへの交換も今まで通り行うことができます。

重油暖房

chauffage au fioul 重油暖房」はフランスの田舎の家でよくみられる暖房です。「chauffage au gaz」と同じシステムですが、「fioul 重油」を使ってお湯を暖める方法。日本では「石油ボイラー」と呼ばれるものです。

fioul」は「gaz」よりも暖房代が安くつくというメリットがありますが、他のエネルギー源と同様に「fioul」も値上がりをしています。

そして大気汚染の原因になることから、2022年7月より新しい「chauffage au fioul」を設置することが法律で禁止されました。「chauffage au gaz」とは違い、新しいものに交換することも禁止されています。

もちろんそのまま使い続けることや修理はできますが、フランスでもこの暖房方法は徐々に減ってくることでしょう。

土から生えている小さな植物を両手で持つ人物。フランスでは思いやりと持続可能性を象徴しています。

木質ペレット暖房

chauffage au granulés」も比較的安価な暖房として、フランスの田舎では人気の方法です。

granulé」とは「顆粒状の」という意味で、ここでは「木質ペレット」のこと。「granulé」を燃やすことでお湯を作り、「tuyau」の中を通すことで家を暖めるシステムになっています。

安価で環境にやさしい「chauffage」といもわれていますが、「gaz」とは違い「granulé」をストックする場所も必要というデメリットがあるため、比較的広さに余裕がある家で選択される方法です。

暖炉やストーブ

一般的には一部分を暖める暖房器具として使われる「cheminée 暖炉」や「poêl ストーブ」ですが、暖めた空気を配管に通す「chauffage central」としての使い方も多くなってきています。

暖めた空気を通す配管は「chauffage au gaz」で使うものより太いので、配管を通す壁や天井の間も分厚い必要があり、お湯を巡らせるタイプの「chauffage central」よりも設置が大掛かり。新築の一軒家などで取り入れられているようです。

cheminée」や「poêle」では「bûche 薪」が使われますが、燃費の良さから「granulé」を薪状に押し固めたものも使われています。

電気暖房

フランスでは「cauffage électrique 電気暖房」といえば、暖房しかしてくれない器具が基本。電気での暖房というと、エアコンを想像するかもしれませんが別物です。

この「cauffage électrique」は壁に固定されるタイプ。「chauffage central」と比べて設置が容易なため、フランスでよく見られる暖房器具です。

chauffage central」と違いすぐに暖かくなるのもメリットですが、古いタイプのものは空気が汚れやすい・乾燥するなどのデメリットもあります。

ホコリや焼けて焦げた臭いがすることもあるため、「grille pain パン焼き器」と揶揄されることも。

とくに断熱の甘い古いアパートでは、かなりの電気代がかかるようなので、請求書を見てびっくり!とならないよう気をつけてくださいね。

ヒートポンプ

pompe à chaleur ヒートポンプ」とはいわゆる「エアコン」のこと。フランスの家庭では一般的ではありませんでしたが、環境にやさしい暖房方法として人気が高まっています。

冷房としても使えるものは「pompe à chaleur réversible」。「réversible」は「リバーシブルの、逆転できる」という意味。フランスでも猛暑日が増えてきているため、設置を検討する人も多いようです。

政府も「pompe à chaleur」を推奨しているようで、新たに設置する際には国から補助金が出るようになっています。

とはいえ、フランスには古い「appartement アパート、マンション」が多く、室外機を置く場所がないため、「pompe à chaleur」を設置できないことも多いようです。

フランスで、ピンクのニット帽と手袋をはめた女性がヒーターの上で両手に顎を乗せ、考え込むように目をそらしている。

フランス人の暖房の使い方

フランスと日本では「chauffage」の種類も違いますが、使い方も違います。ここからはフランス人の「chauffage」の使い方についてお伝えしてきます。

暖房をつけるのはいつから?

フランスで「chauffage」をつけるのは本格的に寒くなる前。家全体を暖める方法が主流なため、スイッチを入れてすぐに暖かくなるわけではないからです。

そして「appartement」の「chauffage central」の場合は、自分でつける日を決められるわけではありません。

chauffage collectif 共同の暖房」、つまり大本の暖房機は「appartement」全体に一つで、それによって暖められたお湯が各家の配管を巡っているため、組合で決められた日にしか暖房がスタートしないようになっているからです。

暖房をいつからつけるかは地方によっても違いますが、パリなら10月中から下旬が多いようですよ。

【暖房を消すのはいつ?】

chauffage」をつけるのも早ければ、消すのも遅いのがフランスで、「chauffage central」の場合は4月中旬というのが一般的です。

確かにパリなどの北フランスでは、4月はまだ寒いことが多く、ダウンコートを着ている人もいるほど。特に朝晩は冷え込むため、「chauffage」が欲しいと思う日は多々あるのです。

【暖房の期間は短くなる傾向】

フランスでは温暖化対策のため、エネルギー消費量削減すべく政府が様々な対策を打ち出しています。

その一つがオフィスの暖房をつける期間を短くするというもの。つけるのも消すのも15日短くすることを推奨しています。

フランスといえば秋と春も室内は暖かいものでしたが、少しずつ変わっていくのでしょう。

暖房はつけっぱなしが基本

フランスでは一度つけた「chauffage」はつけっぱなしにするのも、日本とは違う点です。暖房代がもったいないと思うかもしれませんが、家全体を暖める方法が主流なため、一度下がった家の温度を再度暖める方が高くつく、という考えのようです。

また、家の温度が下がると湿気で家が傷んでしまうため、湿気対策としても「chauffage」はつけっぱなしにしておきます。数日~数週間家を空ける場合でも、「chauffage」は設定温度は下げるけれど、つけっぱなしで出かけるんですよ。

暖房の温度は19度程度に設定している家庭が多いよう。暖房代節約のために、それよりも低めに設定する家庭もあります。

お風呂場にはタオル乾燥機

フランスのお風呂場には、暖房としても使える「sèche serviette タオル乾燥器」が付いていることも多いです。

これは壁に固定するオイルヒーターのようなもので、「tuyau」の中のオイルが温まることで暖房器具が温かくなる仕組みになっています。

もちろん「chauffage central」の暖房器具が付いていたり、「chauffage électrique」が付いていることも。

フランスのお風呂は洗面室や脱衣所と一体型なため、日本のお風呂よりも面積が広く、お風呂に入っても空気が温まりにくいですよね。

そのためお風呂場に「chauffage」が付いているのは一般的で、日本のように一番風呂は寒い、ということもないようです(もちろん家によっては「chauffage」が付いておらず、とても寒いこともありますが…)。

フランスのホテルの暖房スイッチ

フランスのホテルに泊まったとき、少し戸惑ってしまうのが暖房の付け方。基本的にはシンプルで操作も簡単なのですが、オンとオフのスイッチが日本人にはわかりにくいことがあります。

フランスではスイッチの両端に「○」と「-」と記載されているのですが、どちらがオンでオフかわかりますか?

正解は「○」がオフ、「-」がオンです。

なんとなく、「○」がオンで「-」がオフな気がしてしまいませんか?通常はオンにすると可動を始めますが、設定温度が低い場合はすぐに稼働を始めないこともあり、戸惑ってしまうこともあるでしょう。

ホテルの暖房以外でも、スイッチのオンオフは「○」と「-」で表示されていることが多いので、ぜひ覚えておいてくださいね。

柔らかい紫色の壁に、ホットピンクのスカーフで覆われた白いラジエーターと白いフランス製の貯金箱が置かれています。

フランスの電気代と支払い方法

ここまでフランスの暖房についてお伝えしてきましたが、ここからは気になる電気代や支払い方法などについて紹介します。

会話中で花子さんが言っているように、「chauffage central」なら家賃に含まれていることが多い(もしくは一律料金)のですが、「chauffage électrique」の場合は使った分だけ請求が来ることが多いので、留学などでアパートを借りる方は事前に知っておくと安心ですね。

フランスの電気代はいくら?

一般的な一年間の電気代は、オール電化の場合、*30m²で 5832 kWh、1467,33ユーロとのこと。月平均にすると約122ユーロです。

一人暮らしのワンルームはこれよりも狭いことが多いので、100ユーロ程度が目安になるでしょう。

ただし電気代は年々上がっており、2022年と比べると2024年は40%以上も値上がりしています。フランスでの生活費を考えるときには、電気代を多めに見積もっておく方が良いかもしれませんね。

*参照:Selectra

電気代請求の頻度

電気代の請求は2ヶ月に1度が基本。検針は年に2度なので、それ以外の時期はおおよその金額が請求されます。

引っ越した年などは、前の住人の使用量を目安にされるようです。冬に暖房をつけすぎると、差額の請求が恐ろしいことになる…なんてパターンもあるのでご注意を!

【フランスの電気会社】

フランスで電力会社といえば「EDF」、「Electricité de France」といいます。日本のように地方ごとに別れていないのでシンプルですね。

2007年に電力事業が自由化されたため、その他の電気会社もありますが、それでも「EDF」の勢力は強く、フランス家庭の約70%の電力を供給しています。

電気代の支払方法

インターネットの普及により、電力会社のサイト上で支払いをする家庭も増えてきました。銀行口座を設定して、自動で引き落とされるようにしている人も多いようです。

ところが、うっかりミスの多いフランスですから、驚くほどの額が請求&引き落としされてしまうケースも見られます。気がつけば銀行口座が赤字になっていた、なんて避けたいですよね。

そんな人には、銀行小切手や「TIPTitre interbancaire de paiement)」と呼ばれる請求書についてくる支払い用小切手を送り返す方法もありますよ。

ただ返信用封筒には、切手が必要なのが残念なところ。少しでも節約したいなら、ネットでの支払いが良さそうですね。

エネルギー小切手

フランスには電気代などの支払いに使える「chèque énergie エネルギー小切手」があります。これは低所得者に向けて政府が発行するもので、電気代などの高騰のため十分に暖房が使えない家庭をサポートするものです。

金額は家族構成や収入によりますが、2024年の場合は48ユーロから277ユーロ。 学生でも条件に該当すれば支給されるようですよ。

該当家庭には毎年一度発行されますが、電気などの料金が高騰した年には、特別に追加で発行されることもあります。

まとめ

フランスの暖房事情や気になる電気代について紹介しました。

家全体を暖める方法がメジャーなため、家では比較的薄着で過ごす人も多いのも日本とは違う点。温度的には快適ですが、その分空気も乾燥しやすいので、喉を傷めないように気を付けてくださいね。

※2024年5月の情報です。

関連リンク

フランスの電気料金の仕組みと契約
このウェブサイトは、フランスの電気料金の仕組みと契約について詳しく説明しています。フランスでは、電気代の支払いは一年単位の契約で行われることが一般的です。
具体的な料金プランや支払い方法については、リンク先の記事をご参照ください。

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