フランス語の発音は難しそうに思えますが、実はローマ字と似ている部分が多く、基本の母音のルールを覚えることで、すらすらと読めるように!
今回はそんなフランス語の母音について、基本の発音やルールについて詳しく解説します。
母音・フランス語の綴りと発音記号
フランス語の母音の種類
フランス語で使用される「alphabet アルファベット」の数は英語と同じく26文字。そのなかで「voyelle 母音」は6文字、残りの20文字は「consonne 子音」です。
【フランス語の母音一覧】
フランス語の母音 | 母音の発音 |
a | [a]ア |
e | [ɛ]エ / [ə]ウ |
i | [i]イ |
o | [o]オ |
u | [y]ユ |
y | [i]イ |
フランス語の「voyelle」はローマ語の「voyelle」の発音と似ていますが、いくつか違いもあります。各「voyelle」の発音や、使用されている単語を詳しく見ていきましょう。
※以下、発音は[]で括って記載してあります。
フランス語の母音「a」
a ⇒[a][ア]
フランス語の一つ目の「voyelle」は「a]、発音は[a ア]です。発音はローマ字読みの「ア」に近いので簡単ですね。軽く口を開いて、舌を下歯茎に付けて発音しましょう。
明るいイメージの「ア」ではなく、思わず一言漏れてしまったというときの低めの「ア」です。
「a」を含む単語と発音
- ma[ma マ]:私の
- table[tabl ターブル]:テーブル
- ami[ami アミ]:友達
- animal[animal アニマル]:動物
フランス語の母音「e」
e ⇒[ɛ][エ」 / [ə][ウ]
フランス語の基本の「voyelle」の中で少し難しいのが「e」。ローマ字と同じように[ɛ エ]と発音するだけでなく、[ə ウ]と発音することもあります。
[ɛ]はローマ字の「エ」に近い発音ですが、それよりもしっかりと口を横に引きます。「イ」の口にならないよう、縦にもしっかりと口を開けておきましょう。
eを含む単語と発音:[ɛ エ]
- adresse[adrɛe アドレス]:住所
- mer[mɛr メール]:海
- sel[sɛl セル]:塩
日本人には馴染みがなく、少し戸惑ってしまうのが「e」を[ə ウ]と発音する点です。[ə]は「ウ」の口から力を抜いて、だらしなくした感じ。横よりも縦の口の開きを意識しましょう。
eを含む単語と発音:[ə ウ」
- menu[məny ムニュ]:メニュー
- ce[sə ス]これ
- melon[məlɔ̃l ムロン]:メロン
無音の「e」
「e」は使われている単語によっては、無音、つまり「e」の発音をしないことがあります。これにはとても細かいルールがあるのですが、ここでは簡単な基本ルールだけ説明します。
一つ目は、単語の最後に「e」がついているとき。最後の「e]は発音しません。
- école[ekɔl エコル]:学校
- carte[kart カルト]:カード、メニュー表
- Suisse[sɥis シュイス]:スイス
そして「e」の前の子音が1つだけの場合も、発音されないことがあります。
- amener[amne アムネ]:連れてくる
- médecin[medsɛ̃ メドサン]:医者
- contenant[kɔ̃tnɑ̃ コントナン]:容器
アクセントの付いた「e」
「e」にはアクセント記号が付いた「é / è / ê」もありますね。 どれもカタカナでは「エ」と表記されますが、実際は発音が違います
é ⇒ [e」[エ]
「é」の発音の[e」は、アクセントの付かない「e」の発音[ɛ]よりも、さらに口を横に引いて発音します。ほぼ「イ」の発音と同じくらい口を横に引いた状態で「エ」と言ってみてください。
- café[kafe カフェ]:コーヒー
- été[ete エテ]:夏
- étude[etyd エチュード]:勉強
è / ê ⇒ [ɛ][エ]
「è」と「ê」はアクセントの付かない「e」と同じく、[ɛ]と発音します。アクセントが付いている場合は、[ə]と発音することはありません。
- crème[krɛm クレーム]:クリーム
- mère[mɛr メール]:お母さん
- fenêtre[fnɛtr フネートル]:窓
- crêpe[krɛp クレープ]:クレープ
フランス語のアクセント記号については、こちらの記事で詳しく解説しています。
フランス語の母音「i」
i ⇒[ i ][イ]
フランス語の「i」の発音は[i イ」。ローマ字発音よりも、さらに口角を横にしっかりひっぱりながら発音しましょう。
「i」を含む単語と発音
- livre[livr リーヴル]:本
- ici[isi イシ]:ここに
- il[il イル]:彼は
- Nice[nis ニス]:ニース(地名)
フランス語の母音「o」
o ⇒[o][オ]
フランス語の「o」の発音は[o オ]。日本語の「オ」よりも、口を突き出し気味にして、縦の開きも大きめにしましょう。舌は奥に引っ込めます。
「o」を含む単語と発音
- vélo[velo ヴェロ]:自転車
- rose[roz ローズ]:バラ
- mot[mo モ]:単語
- zoo[zoo ゾオ]:動物園
フランス語の母音「u」
u ⇒ [y][ユ]
そしてフランス語の「u」の発音は[y ユ]。「ウ」ではないので、言い間違えないようにしっかり覚えておきましょう。
発音するときは、しっかり唇をすぼめて突き出します。まん丸ではなく少し縦になるように気を付けてください。
これは日本人が苦手な発音の一つで、意識してはっきり発音しないと、フランス人には「e」の発音である[ə]と間違えられてしまいますよ。
「u」を含む単語と発音
- bus[bys ビュス]:バス
- lune[lyn リュヌ]:月
- tu[ty テュ]:君
- une[yn ユヌ]:一つの(un の女性形)
フランス語の母音「y」
y ⇒ [i][イ]
「y」の発音は[i イ]、「i」と同じ発音です。「u」の発音が[y]なのでややこしいため、こちらも混同しないように注意してくださいね。
「y」を含む単語と発音
- cycle[sikl シクル]:周期、サイクル
- gym[ʒim ジム]:体操
- nylon[nilɔ̃ ニロン]:ナイロン
- lycée[lise リセ]:高校
フランス語の複母音
フランス語の発音で多くの人が戸惑うのが、「二つ以上の母音字で一つの母音を表す」ことがあるという点です。これを「複母音」といいます。
【フランス語の複母音一覧】
フランス語の複母音 | 複母音の発音 |
ai | [ɛ]エ |
au / eau | [o]オ |
ou | [u]ウ |
ue / œ eu / œu | [œ]ウァ(エとウの中間のような音) [œ]または[ø]ウ |
ここからは「voyelle」が続く場合の発音ルールについて見ていきましょう。
フランス語の複母音「ai」
ai ⇒[ɛ][エ]
「ai」という綴りが現れたとき、発音は「アイ」ではなく「エ」という一つの「voyelle」になります。発音記号は[ɛ]。アクサン・グラーヴのついた「è」と同じ音です。
フランス語にはこのように、二つ以上の「voyelle」の文字がくっついて一つの音を作るというものがいくつかあります。
「ai」を含む単語と発音
- aimer[ɛme エメ]:愛する
- français[frɑ̃sɛ フランセ]:(形容詞)フランスの /(名詞)フランス語
- japonais[ʒapɔnɛ ジャポネ]:(形容詞)日本の /(名詞)日本語
- anglais[ɑ̃glɛ アングレ]:(形容詞)イギリスの、英語の / (名詞)英語
「ai」の綴りと発音で注意したいのは、「aï」との違いです。この「i」の上についている点二つは「トレマ」という記号。トレマは「通常は一つの音を作る組み合わせの綴りを切り話す」という働きがあります。
「ai」⇒[ɛ]のように1つの音を作る綴りが、このトレマが付いて「aï」となると、「ï」は前の「a」から切り離されて[ai アイ]という二つの「voyelle」に分かれます。
トレマを含む単語と発音
- naïf[naif ナイフ]:素直な、無邪気な
- maïs[mais マイス]:とうもろこし
※トレマが付かない場合→ mais [mɛ メ]:しかし
フランス語の複母音「au /eau」
au / eau ⇒[o][オ]
次に「au」と「eau」という綴りの発音です。発音するとどちらも[o オ]という一つの「voyelle」音になります。
「au」「eau」を含む単語と意味
- aube[o:b オーブ]:夜明け
- pauvre[po;vʀ ポーヴル]:貧しい
- saucisse[sosis ソシス]:ソーセージ
- beau[bo ボー]:美しい、きれいな
- eau[o オー]:水
- gâteau[gato ガトー]:ケーキ
フランス語の複母音「ou」
ou ⇒[u][ウ]
次は「ou」という綴りです。発音は[オウ]ではなく[ウ]です。
発音記号は[u]。日本語の「ウ」よりもっと強い音で、口の開け方を狭くして強く突き出すようにしながら「ウ」と発音してください。
「ou」を含む単語の発音と意味
- fou[fu フ]:狂った、尋常でない
- jour[ʒu: ʀ ジュール]:日
- ou[u ウ]:(接続詞)または
- où[u ウ]:(疑問詞)どこに
*[u]にアクサン・グラーヴがついて[ù]となっても、発音は変わらない
フランス語の複母音「ue / œ」と「eu / œu」
ue / œ ⇒[œ][ウァ]
eu / œu ⇒[œ]または[ø][ウ]
副母音の最後は「ue」と「œ」、「eu」と「œu」という綴りの発音です。
「ue」と「œ」は「ウ」と「エ」の中間のような音を作り、発音記号は[œ]。
「eu」と「œu」は、場合によって2種類の「voyelle」を作ります。やはりどちらも「エ」と「ウ」の中間に聞こえる音ですが、発音記号は[œ]または[ø]です。
[œ]は口を自然な「オ」の形にしながら、舌を下のほうにして「エ」と言うイメージ。
[ø]は口をやや狭く丸めて「オ」の形にしながら、舌を上のほうにして「エ」と言うイメージです。
「ue」「eu」「œ」「œu」を含む単語と発音
- accueil[akœj アクイユ]:受付、応対
- œil[œj ウユ]:目
- bonheur[bɔnœr ボヌール]:幸福
- bleu[blø ブル]:(形容詞)青い /( 名詞)青
- sœur[sœr スール]:姉、妹
- cœur[kœr クール]:心臓、ハート
- œuf[œf ウフ]:卵 *単数形
- œufs[ø ウ]:卵 *複数形で発音がこのように変わる
フランス語の「綴りの上では二つ以上の母音が並んでも、発音上は一つの母音になる」規則をマスターすると、フランス語を読むことがかなり簡単になります。
フランス語の鼻母音
フランス語の特徴的な発音に、鼻にかかるような発音をする「voyelle nasale 鼻母音」があります。
「voyelle nasale」は基本となる6つの「voyelle」である「a・i・u・e・o・y」に、「m」か「n」がプラスされた形です。
「voyelle nasale」には基本的には「n」が使われますが、その後に続く「consonne」が「p」か「b」の場合は「m」が使われます。
【フランス語の鼻母音一覧】
フランス語の鼻母音 | 鼻母音の発音 |
an / am / en / em | [ɑ̃]アン |
in / im / ain / ein | [ɛ̃]アン |
un / um | [œ̃]アン |
on / om | [ɔ̃]オン |
フランス語の鼻母音「an / am / en / em」
an / am / en / em⇒ [ɑ̃][アン」
[ɑ̃]はカタカナ表記すると「アン」になりますが、実際には「オン」に近い発音です。
日本語の「ア」の発音よりも、口を縦に大きく広げ、舌を奥に引いて発音しましょう。喉の上の方が詰まるような感覚があれば正解です。
「an / am / en / em」を含む単語と発音
- France[frɑ̃s フランス]:フランス
- campagne[kɑ̃paɲ カンパーニュ]:田舎
- embouche[ɑ̃buʃe アンボージュ]:採用、募集
- ensemble[ɑ̃sɑ̃bl アンサンブル]:一緒に
フランス語の鼻母音「in / im / ain / ein」
in / im / ain / ein ⇒ [ɛ̃]アン
[ɛ̃]も「アン」と表記されることが多いですが、「アン」に少し「エン」が混じったような発音です。
日本語の「ア」のように上下に口を開けるのではなく、「エ」のように口を横にひきながら「アン」と発音します。
「in / im / ain / ein」を含む単語と発音
- fin[fɛ̃ ファン]:終わり
- impeccable[ɛ̃pekabl アンぺカーブル]:欠点のない、完璧な
- pain[pɛ̃ パン]:パン
- peinture[pɛ̃tyr パンチュール]:絵画
フランス語の鼻母音「un / um」
un / um ⇒ [œ̃]アン
こちらの[œ̃]も上記の[ɛ̃]と同じく、口を「エ」のように横にひきながら発音します。
厳密には発音が違うのですが、実際はフランス人でも[œ̃]を使うべきところを[ɛ̃]と発音する人が多いようです。
「un / um」を含む単語と発音
- un[œ̃ アン]:一つの
- lundi[lœ̃di ランディ]:月曜日
- parfum[parfœ̃ パルファン]:香り、香水
- humble[œ̃b アンブル]:謙虚な、貧しい
フランス語の鼻母音「on / om」
on / om ⇒[ɔ̃]オン
[ɔ̃]の発音は「オン」。日本語の「オ」よりも口をすぼめて発音しましょう。
「on / om」を含む単語と発音
- nom[nɔ̃ ノン]:名前
- bon[bɔ̃ ボン]:良い
- combat [kɔ̃ba コンバ]:戦闘
- donc[dɔ̃ ドン / dɔ̃k ドンク]:それゆえ
母音と鼻母音の見分け方
「voyelle」に「n」か「m」が続いても「voyelle nasale」にならないケースもあります。基本ルールはこちら。
【「n」か「m」の後に「voyelle」が続く場合】
「n」か「m」の後に「voyelle」が続く場合は、前の「voyelle」と引っ付いて「voyelle nasale」にはせずに、後ろの「voyelle」と引っ付けて発音します。
- uniforme[ynifɔrm ユニフォルム]:同じ形の
- omelette[ɔmlɛt オムレット]:オムレツ
- ananas[ananas アナナス]:パイナップル
- image[imaʒ イマージュ]:映像、イメージ
【「n」か「m」が2つ続く場合】
「voyelle」の後ろに「n」か「m」が2つ続く場合も、「voyelle nasale」にはなりません。
- Anne[an アン]:アンヌ(女性の名前)
- commissariat[kɔmisarja コミサリア]:警察署
- immigré[imigre イミグレ]:移住した
下記のように男性形から女性形を作るときに、語末が「en → enne」となる単語でも、「voyelle nasale」から発音が変わります。
- sien[sjɛ̃ シヤン]→ sienne[sjɛn シエヌ]:彼の / 彼女の
- parisien[paʁizjɛ̃ パリジャン]→ parisienne[parizjɛn パリジエンヌ]:パリの、パリの人
フランス語の半母音
フランス語には二重母音がない代わりに、「semi-voyelle 半母音」と呼ばれるものがあります。
これは単語の中で「voyelle」が連続する場合に、片方の「voyelle」の発音が弱まり、子音に近くなる発音です。
フランス語では [i] [u] [y] がそれぞれ弱まった、[j] [w] [ɥ] の3つがこの「半母音」に分類されています。本来の音([i] [u] [y])を非常に短く発音する、というイメージの音です。
「i」「u」「y」はフランス語の母音字の前に位置するとき、それぞれ[j] [w] [ɥ]と発音します。
「il」と「ill」 は多くの場合は[j]と発音し、語末では[イュ]のようなフランス語発音になります。
フランス語の半母音[ j ]
[j]は[i]の発音が弱まったもので、連続する「voyelle」次第で「ヤ・ユ・ヨ」のような発音になります。
「i」+「voyelle」、もしくは「voyelle」+「il / ill」の形のときに、[i]の発音を弱めて[j]に変化させましょう。
- piano[pjano ピィアノ]:ピアノ
- travail[travaj トラヴァィユ]:仕事
- feuille[/fœj フィユ]:葉っぱ
フランス語の半母音[w]
フランス語の半母音の[w]は[u]が弱まったもので、「ウ」と「ワ」の間のような発音です。
「ou」+「voyelle」の並び、もしくは「oi」や「oy」の発音で使われます。
- oui[wi ウィ]:はい
- noisette[nwazɛt ヌワゼット]:ノワゼット、ハシバミの実
- ouest[wɛst ウエスト]:西
フランス語の半母音[ɥ]
[ɥ]は[y]が弱まった半母音。[y]を短く発音しましょう。
「u」+「voyelle」の並びの単語、特に「a / e / i / y」が続くときに、[ɥ]と発音することがあります。
- nuit[nɥi ニュイ]:夜
- huit[ɥit ユイット / ɥi ユイ]:8つの
- nuage[nɥaʒ ニュアージュ]:雲
まとめ
今回はフランス語の母音「voyelle」の種類と発音について紹介しました。
フランス語はローマ字と「voyelle」の発音が似てる点も多いため、基本の発音ルールを覚えてしまえば、フランス語単語の読み方で悩むことがなくなりますよ。
記事で紹介しているカタカナの発音表記はあくまでも参考です。実際の発音はレッスンやCDなどで確認してください。何度も繰り返して口にして、考えなくても自然と正しい発音ができるようになりましょう!
フランス語のその他の発音ルールについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連リンク
フランス語の母音と綴り
東京外国語大学のウェブサイトにあるこのセクションでは、フランス語の母音に関する包括的な概観を提供しています。特に母音の種類とそれに対応する綴り、そして発音の特徴が詳しく説明されています。