フランスの税金①消費税

  1. フランス留学生活・費用

税金の率や仕組みは国それぞれですが、フランスの消費税は日本と比べ、とても分かりにくい仕組みになっています。

旅行中にレシートを見て疑問に思わないよう、フランスの消費税がどうなっているのかを見てみましょう。

フランスの税金①消費税

フランスの消費税とは

まずはフランスで消費税は何というのか、その仕組みから見ていきましょう。

フランスの消費税は「TVA」

フランスの消費税は「TVA(taxe sur la valeur ajoutée) 付加価値税」と呼ばれるものが該当します。

  • taxe 税金
  • valeur 価値、値打ち
  • ajoutée 付け加えられた

ajoutée」は動詞「ajouter 付け加える」の形容詞形。「valeur」が女性名詞なので、「ajoutée」と最後に「e」が付いています。

TVAの仕組み

フランスでは内税が基本。つまり商品代金と「TVA」の合計額、支払いの総額料金が表示されています。

商品やサービスの料金表示は、一般のお店では総額料金のみで、「TVA」は明記されていませんが、お店によってはTVAの詳細がレシートで確認できる場合もあります。

日本のように税抜き価格と税込み価格が連記されることがなく、お店や表品による表示の違いもないので、シンプルで分かりやすいですね。

【HTとTTC】

内税が基本のフランスですが、プロ御用達のお店では、「TVA」を含まない商品の値段だけが表示されている場合がほとんどです。

表示価格に「TVA」を含まない場合は「HT(hors taxe) 税抜き」と表示され、税込みであることをはっきり表現したいときには「TTC(toutes taxes comprises) 税込み」と表示されます。

  • hors ~の外に、~から外れた
  • toutes 全ての(tout の女性形複数)
  • comprises 含まれた(compris の女性形複数)

HT」と「TTC」の表示があるのは、プロが購入する場合は「TVA」を支払う必要がないから。「HT」の表示があるお店でも、一般客は「TTC」の金額を支払う必要があります。

安いと思ったら「HT」だったとならないよう、専門店で買い物をするときには注意してください。

フランスの優雅さを彷彿とさせる、ぼやけた背景に「TVA」の文字が一列に並んだ木製のブロック。

フランスのTVAの税率

フランスの消費税率は日本よりも高いと聞いたことがありませんか?ここからはフランスの「TVA」の種類や税率について解説します。

税率の種類は4つ

2024年現在のフランスのTVAは4種類。20%・10%・5.5%・2.1%の税率です(海外領土県を除く)。

基本的な税率は「taux normal 標準の税率」と呼ばれます。

例外(とはいっても沢山あるのですが)として生活の必需品やサービス、レストランなどに適応されるそれ以外の税率を「taux intermédiaire ou réduit 中間・もしくは割引の税率」と呼びます。日本でいう軽減税率のことですね。

健康保険対象の薬など、特別なものに適用される税率は「taux particulier 特別税率」と呼ばれます

  • taux 率
  • normal 標準の、普通の
  • intermédiaire 中間の
  • réduit 縮小された、割り引かれた 
  • particulier 特別の、固有の

【TVAの税率】

taux normal 20%
taux intermédiaire10%
taux réduit5.5%
taux particulier2.1%

では、実際にどんなものが「taux intermédiaire ou réduit」になるのかを見てみましょう。フランス政府のサイトには、下記が当てはまると記載されています。

もっと詳しく知りたい方は、こちらの政府のサイトも確認してくださいね。

【Le taux 20%】

majorité des ventes de biens et des prestations de services : il s’applique à tous les produits ou services pour lesquels aucun autre taux n’est expressément prévu

ほとんどの財産やサービスの販売。他に用意されたどの税率にも該当しない商品やサービスに適応される

フランスの消費税率は20%が基本なので、下記で紹介するようなもの以外の物以外は全て20%が適用されます。

【Le taux 10%】

  • produits agricoles non transformés 加工されていない農産物
  • bois de chauffage 暖房用の木(薪)
  • travaux d’amélioration du logement qui ne bénéficient pas du taux de 5,5%(5.5%の税率が適用されない住居の改良工事
  • certaines prestations de logement et de camping ある種の住居やキャンプ村のサービス
  • foires et salons 見本市や展示会
  • jeux et manèges forains 縁日のゲームや乗り物
  • droits d’entrée des musées, zoo, monuments, établissements thermaux 美術館や動物園、温泉の入場料
  • transports de voyageurs 乗客の輸送手段
  • traitement des déchets 廃棄物処理
  • restauration レストラン業
  • engrais biologiques 有機肥料

旅行者にも嬉しいのが、美術館や公共交通機関・ホテル・レストランなどの税率が低いこと。フランス滞在の基本的な出費の税率は10%になっています。

とはいっても、フランスのホテルもレストランも安くないのですが…。もし20%になってしまったら、今の金額より10%も差が出てしまうので、10%の税率でも20%よりはマシ、といえるのではないでしょうか。

【Le taux 5,5%】

  • essentiel des produits alimentaires 必要不可欠な食料品
  • produits de protection hygiénique féminine 生理用品
  • préservatifs コンドーム、避妊用具
  • équipements et services pour handicapés 障碍者向け設備やサービス
  • livres sur tout support 全ての形態の本
  • abonnements gaz et électricité ガスと電気の契約
  • fourniture de chaleur issue d’énergies renouvelables 再生可能エネルギーによる暖房
  • fourniture de repas dans les cantines scolaires 学食の提供
  • billetterie de spectacle vivant et de cinéma 舞台芸術と映画のチケット
  • certaines importations et livraisons d’œuvres d’art ある種の芸術作品の輸入と輸出
  • travaux d’amélioration de la qualité énergétique des logements 住居の省エネのための工事
  • logements sociaux ou d’urgence 公営住宅、もしくは応急住宅 
  • accession à la propriété 不動産の取得
  • activités équestres 乗馬

食料品については後で詳しく説明しますが、スーパーなどで購入する食料品のほとんどは5.5%と税率が低くなっています。

本や舞台などの税率も低いのは、さすが文化大国フランスといったところでしょうか。

【Le taux 2,1%】

  • médicaments remboursables par la sécurité sociale 健康保険で払い戻しされる薬
  • ventes d’animaux vivants de boucherie et de charcuterie à des non assujettis 肉屋や豚肉製品屋による飼育目的ではない生きた動物の販売
  • redevance télévision テレビの受信料
  • certains spectacles ある種のスペクタクル
  • publications de presse inscrites à la Commission paritaire des publications et agences de presse 出版物と報道機関に関する合同委員会に登録されている新聞の出版

 薬や新聞の「TVA」は2.1%と一番低い税率が適用されます。健康保険で払い戻しされるとはいえ、薬の税率が低いのはありがたいですね。

生鮮食品、フランスパン、缶詰、ボトル入り飲料などの食料品を詰めたショッピングカートがスーパーマーケットの通路を進んでいます。

食料品の税率

食料品の「TVA」は基本的に5.5%ですが、「基本的な食料品=贅沢品を除く」ということ。贅沢品は20%の税率が適用されます。

【贅沢品とは?】

フランスで贅沢品扱いで、20%の「TVA」が課される食品はこちら。項目の少なさにびっくりされるかもしれません。

  • confiseries 飴やガム、キャラメルなどのこと
  • chocolat et produits chocolatés チョコレートとチョコレート製品
  • caviar キャビア
  • margarines マーガリン

甘いものやおやつ系は全て贅沢品に当てはまるかと思いきや、「confiseries」と「chocolat」系のみ。例えばクッキーやポテトチップスなどは20%が適用されません。

三大珍味に挙げられる「fois gras フォアグラ」も「truffe トリュフ」も適用外です。そんな中で「caviar」だけが税率20%なのは、他の2つと違い主に輸入物になるからだと考えられます。

そして「margarines」の「TVA」は20%なのに、「beurre バター」は5.5%。日本人からすると「beurre」の方が贅沢な気がしますが、「beurre」は酪農製品、「margarines」は工業製品という点で税金が分かれているのでしょう。

【テイクアウトの場合】

そして贅沢品ではないけれど、「consommation immédiate すぐに(その場で)消費」できるサンドイッチやハンバーガーなどの食品は10%の税率になります。

レストランの税率は10%ですが、テイクアウトや配達してもらった場合の税率も10%。しかし、テイクアウトや配達専門のお店で、その場での飲食ができない場合は、5.5%の税率が適用されます。

もっとわかりにくいことに、「consommation immédiate」で10%が適用されるお店の場合でも、ペットボトルの水の税率は5.5%。

これはペットボトルは、そのまま家に持ち帰って保存できるから、という理由とのこと。同様に、個別パックのヨーグルトやフルーツ、ポテトチップスなども5.5%の税率です。

フランスの食料品の「TVA」は、なんともわかりにくいですね。

黄色い背景を背景に、おさげ髪の少女が長方形のチョコレートバーを持って微笑んでいます。彼女は、フランスで見られる魅力的なスタイルを彷彿とさせる青いシャツを着ています。

チョコレートの税率

上記でチョコレートの「TVA」は20%とお伝えしましたが、実はチョコレートの税率は5.5%と20%に分かれています。

フランスでは板チョコのブラックチョコレートは生活必需品扱いで5.5%が適用、ミルクチョコレートなどそれ以外は贅沢品として20%が適用されます。

カカオ含有率が高いブラックチョコレートの方が贅沢な気がするので、逆の方がしっくり感じるのですが…。

チョコレートと同様に、同じカテゴリーでも税率が変わるものもいくつもあり、例えば本なら基本は5.5%。成人未満禁止(18禁)の類は20%です。

ワインの税率

ワインに関わらず、全てのアルコールの「TVA」は20%。スーパーなどで購入しても、レストランなどで注文しても税率は変わりません。

フランスではワインは生活必需品扱いな気がするので意外ですが、ワインも贅沢品扱いとなっています。

【同時購入品の税率に注意】

フランスで異なる税率の食品を購入した場合、それぞれ適した税率で計算する場合と、一番高い税率で全てを計算する場合があります。

税率が20%のワインと5.5%のチーズを同時に購入した場合、チーズも20%で計算されてしまうことがある、ということ。

合計額が高くなってしまうため、それぞれの税率で計算されていることが殆どですが、高い方で計算されていることもありえます。しかし違法やぼったくりではないので、お店に文句を言っても仕方がないということだけ覚えておいてください。

フランスの消費税が高い理由

フランスの消費税「TVA」は、軽減税率があるとはいえ基本的には20%と、日本と比べてとても高くなっています。

その一つ目の理由はフランスはEU加盟国で、EU加盟国にはVAT指令に従う必要があるからです。これによって、原則税率15%以上と定められています。

もう一つの理由は、社会保障制度が充実しているという点。フランスでは医療や教育にほとんどお金がかからず、失業保険や社会福祉なども手厚くサポートされています。

TVA」は高くても、日常的に税金が国民に還元されていると感じることができる社会システムになっているのです。

白い長袖シャツを着た人が店内の通路でショッピングカートの上に買い物レシートを持っており、フランスの日常的な市場の光景を彷彿とさせます。

フランス語会話:消費税は何種類?

最後に、フランスの消費税「TVA」に関するフランス語会話を見ていきましょう。今まで登場した単語をチェックしながら読んでくださいね。

会話

花子さんとマリーさんは、スーパーでお買い物をしてるようです。

Hanako : (en regardant le ticket de caisse)

(レシートを見ながら)

Regarde, pour mes courses, il applique deux taux de TVA. Tu sais pourquoi ?

見て、私の買い物に、2つの税率の付加価値税が適用されているわ。どうしてか分かる?

Marie : Ah, c’est normal. Tu as acheté des produits alimentaires de base et des autres choses.

ああ、それって普通のことよ。基本的な食品とそれ以外のものを買ったでしょ。

Hanako : C’est-à-dire ?

どういうこと?

Marie : C’est –à-dire que, pour les produits alimentaires de base,  le TVA est à 5.5%.

つまり、基本的な食品のTVAは5.5%なの。

Et pour les autres choses, l’alcool, les produits ménagers, etc., le taux est à 20%.

そして、他のもの、お酒や掃除道具みたいなものは、TVAは20%よ。

Hanako : D’accord. Donc, les taux de TVA peuvent varier suivant les produits, c’est bien ça ?

なるほど。つまり付加価値税の税率は商品によって異なるってことよね?

Marie : Oui, c’est ça. Mais attention, le chocolat que tu adores, soit le chocolat noir soit le chocolat au lait, le TVA ne sont pas le même.

ええ、その通りよ。でも気をつけてね。あなたの大好きなチョコレートは、ブラックチョコとミルクチョコで税率が同じじゃないのよ。

Hanako : Qu’est-ce que c’est que ça ! C’est trop compliqué !

なにそれ!ややこしすぎるわ!

ポイント

Qu’est-ce que c’est que ça 

 「Qu’est-ce que c’est?」は「これは何?」の意味で、おなじみの表現ですよね。そこに「que ça」が付いた「Qu’est-ce que c’est que ça」の意味は何になるのでしょうか。

1つ目は「Qu’est-ce que c’est que ça?」で「これは何?」の意味。 「Qu’est-ce que c’est?」と同じですね。

2つ目つは「Qu’est-ce que c’est que ça.(もしくは「!」や「?」をつけて)」で「これはいったい何だ」と不満であることを表現します。

使い分けにはイントネーションの違いしか無いので「これは何?」の意味で使う場合は、シンプルに「Qu’est-ce que c’est?」というほうが良いでしょう。

また2つ目の意味では「que ça」の変わりに名詞や形容詞を使い、その状態への不満を表現することもできます。

Qu’est-ce que c’est ce bazar !

なんて散らかりようなの!

Qu’est-ce que c’est ce chocolat…C’est dégoûtant.

(変な形のチョコレートを見ながら)何なんだこのチョコレートは…見るのも不快だ。

まとめ

フランスの消費税「TVA」について紹介しました。

基本は20%と日本よりも高いですが、基本的な食品や、衛生用品などの税率は低いのが特徴的。芸術関係やバカンス関係の税率も、通常税率より低くなっているのもフランス的といえるのではないでしょうか。

全ての贅沢品=税率が高い、ではないところに注目すると、「TVA」からもフランスの国民性が垣間見えて面白いですよ。

※2024年7月の情報です。

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フランスの消費税
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