1-1. 「avoir + 症状」と「avoir mal à + 部位」のコアイメージと冠詞の使い分け
身体の特定の場所が痛むときは、動詞 avoir(持っている) を使った熟語 avoir mal à + 定冠詞 + 身体部位 を使います。直訳すると「〜(部位)に痛みを持っている」というイメージです。
ここで最も重要なのが、前置詞 à と後ろに続く定冠詞(le, la, l’, les)の縮約(合体)ルールです。痛む部位の名詞が「男性名詞・女性名詞・母音(または無音のh)始まり・複数形」のどれに当たるかによって、以下の4通りに変化します。
男性単数名詞の前(à + le ➔ au): J’ai mal au ventre.(お腹が痛い) / J’ai mal au bras.(腕が痛い)
女性単数名詞の前(à la のまま): J’ai mal à la tête.(頭が痛い) / J’ai mal à la gorge.(喉が痛い)
母音・無音のh始まりの単数名詞の前(à l’): J’ai mal à l’estomac.(胃が痛い) / J’ai mal à l’épaule.(肩が痛い)
複数名詞の前(à + les ➔ aux): J’ai mal aux dents.(歯が痛い) / J’ai mal aux yeux.(目が痛い)
一方、「風邪をひいている」「熱がある」「咳が出る」といった症状や病気そのものを伝える場合は、前置詞 à は使わず、avoir + 冠詞 + 症状名 の形をとります。症状の数え方(可算・不可算・複数で出るもの)によって冠詞を使い分けます。
不定冠詞(un / une)を使う症状: J’ai un rhume.(風邪をひいています) / J’ai une toux sèche.(乾いた咳が出ます)
部分冠詞(de la / du)を使う症状: J’ai de la fièvre.(熱があります)
定冠詞(la)を使う流行性の病気: J’ai la grippe.(インフルエンザにかかっています) / J’ai la diarrhée.(下痢をしています)
複数不定冠詞(des)を使う反復症状: J’ai des frissons.(悪寒がします) / J’ai des courbatures.(関節痛・筋肉痛があります)
さらに、転倒や不注意で「〜を痛めた」「〜を切った」「〜の骨を折った」という突発的な怪我・外傷には、自分自身の身体に作用が及ぶ代名動詞(se faire mal à / se couper / se casser)の複合過去形(過去形)を使います。
💡 ワンポイント解説:代名動詞で身体部位を言うときも、英語の my arm のように所有形容詞(mon / ma)は使わず、定冠詞(le / la / les)を使うのがフランス語の鉄則です。「Je me suis fait mal au bras.(腕を痛めた)」「Je me suis cassé la jambe.(脚の骨を折った)」のように表現します。また、「痛みを伴う・苦しい」という形容詞は douloureux(男性形)/ douloureuse(女性形)と綴ります(× douleureux と誤記しやすいので要注意です)。
① 風邪の重さと呼吸器疾患の区別:
一般的な鼻風邪や軽い風邪は un rhume(男性名詞)ですが、診察室で医師が Vous avez un bon rhume. や un gros rhume と言った場合、「(いい風邪ですね、ではなく)かなりひどい風邪・本格的な風邪をひいていますね」という意味になります。さらに高熱や全身の痛みを伴うインフルエンザは la grippe(女性名詞)、肺炎は une pneumonie(女性名詞)と明確に区別されます。
② 咳(toux)の性質と声の状態:
フランスで咳止め薬をもらう際、必ずと言っていいほど聞かれるのが「乾いた咳ですか?それとも湿った咳ですか?」という質問です。コンコンと喉が張り付くような乾いた咳は une toux sèche、ゴホゴホと痰が絡む湿った咳は une toux grasse(直訳:脂っこい・濃い咳)と呼びます。また、喉の炎症で「声が出ない・声が枯れている」状態は形容詞 aphone を使い、Je suis aphone. と一言でスマートに伝えられます。
③ 体温(température)の伝え方:
フランスは日本と同じ摂氏(℃:degrés Celsius)を使いますが、小数点の読み方に特徴があります。フランス語では小数点をピリオドではなくコンマ( , :virgule)で表記して読みます。たとえば「38.7度(38,7℃)の熱があります」と言う場合は、J’ai 38,7(trente-huit virgule sept)de fièvre. または Ma température est de 38,7 degrés. と表現します。「平熱」は une température normale(通常は37度前後)と言います。
フランス語(性・品詞)
発音の目安
日本語訳
使う場面・ニュアンス
un rhume / un bon rhume (m.)
アン リュム / アン ボン リュム
風邪 / かなり重い風邪
bon や gros がつくと「しっかり進行した重い風邪」のニュアンス
la grippe / une pneumonie (f.)
ラ グリップ / ユヌ プヌモニ
インフルエンザ / 肺炎
高熱や激しい全身症状・呼吸器症状を伴う疾患
la fièvre / fiévreux(-euse) (f. / adj.)
ラ フィエーヴル / フィエヴルー(ズ)
発熱(熱) / 熱っぽい
J’ai de la fièvre.(熱がある)/ Je me sens fiévreux.(熱っぽい)
une température normale (f.)
ユヌ タンペラテュール ノルマル
平熱
熱は下がったが他の症状があるとき等に医師へ伝える重要語彙
une toux sèche / une toux grasse (f.)
ユヌ トゥ セッシュ / ユヌ トゥ グラース
乾いた咳 / 痰が絡む湿った咳
薬局でシロップ(sirop)を選ぶ際に必ず確認される2分類
être aphone (adj.)
エートル アフォヌ
声が出ない・声が枯れている
風邪や喉の酷使で声が出なくなった状態(男女同形)
avoir le nez qui coule / bouché
アヴォワール ル ネ キ クル / ブシェ
鼻水が出る / 鼻が詰まっている
couler(流れる)と boucher(塞がる)を使った超頻出の鼻症状
éternuer (v.)
エテルニュエ
くしゃみをする
J’éternue sans arrêt.(くしゃみが止まらない)のように動詞で表現
des frissons (m.pl.)
デ フリッソン
悪寒・寒気
熱の上がり際にゾクゾクする寒気(通常は複数形で使用)
des courbatures (f.pl.)
デ クルバテュール
関節痛・全身の筋肉の痛み
風邪やインフルエンザで節々が痛むときに使う必須単語(複数形)
la diarrhée / des nausées (f. / f.pl.)
ラ ディアレ / デ ノゼ
下痢 / 吐き気
胃腸風邪(gastro-entérite)や食あたりなどの消化器症状
1-3. フランスの医療機関(病院・一般医・薬局)の選び方と受診システムの基本
日本とフランスでは、体調を崩したときの「最初に行く場所」が大きく異なります。日本では風邪でも総合病院やクリニックへ直接行くことが多いですが、フランスでいきなり大きな総合病院(un hôpital ※oの上にアクサン・シルコンフレックス ô がつきます)へ行くと、救急外来(les urgences)扱いとなり、命に関わる重症患者が優先されるため5〜8時間以上待たされることも珍しくありません。
朝起きたときの喉のイガイガや寒気、昨夜よく眠れなかったことを身近な人に伝える5つのフレーズです。とくに「attraper froid(冷気をつかまえる=風邪をひく)」や「passer une nuit blanche(白い夜を過ごす=一睡もせず徹夜する)」は、フランス人が毎日のように使う超定番の慣用表現です。
📌 朝の喉の違和感
Je crois que j’ai attrapé froid hier soir, j’ai très mal à la gorge ce matin.
診察室に入ったら、医師に「Docteur(先生)」と呼びかけ、体温や症状の経過を具体的に伝えます。とくに元原稿でも重要なポイントとなっている「昼間(la journée)と夜(la nuit)での症状の差」や、「平熱よりほんの少し高い(un tout petit peu au-dessus de la normale)」といった微妙なニュアンスを正確に伝える5例文です。
📌 発熱と風邪の複合症状の申告
Docteur, j’ai 38,7 de fièvre depuis hier. Je tousse beaucoup, j’éternue et j’ai le nez qui coule.
このとき非常に便利なのが、ジェロンディフ(en + 現在分詞:〜しているときに・〜して)と、道具や原因を表す前置詞 avec(〜で) です。また、階段の「段(ステップ)」はフランス語で une marche(女性名詞 ※男性名詞と間違えやすいので注意!)と言い、階段全体は les escaliers(または un escalier)と表現します。
📌 階段で転倒して腕を痛めた
J’ai trébuché sur une marche et je me suis fait très mal au bras droit en tombant.
🇯🇵 フランス語の h は、英語のように息を吐く「ハ・ヒ・フ・ヘ・ホ」の音を一切出しません。hôpital [ɔ.pi.tal] は完全な母音「オ」から始まるため、前置詞 à がつくとエリジオン(母音字省略)とアンシェヌマンが起きて à l’hôpital [a.lɔ.pi.tal](アロピタル)となります。同様に、rhume [ʁym](リュム)の h も単なる歴史的な綴り字であり、発音には一切影響しません。
「咳(名詞)」と「咳をする(動詞)」の語末変化:
🇯🇵 名詞の「咳」である une toux は、語末の x を発音せず [tu](トゥ)と短く読みます。しかし、動詞の「咳をする」である tousser [tu.se](トゥセ)や、その活用形 je tousse [ʒə.tus](ジュ・トゥス)になると、しっかり [s] の摩擦音が現れます。
ausculter(聴診する)の au と sc:
🇯🇵 ausculter [os.kyl.te](オスキュルテ)は、語頭の au を「オ」、続く sc を「ス」と「キュ」に分けて読みます。医師が「Je vais vous ausculter」と言ったとき、vous の s がリエゾンして「ヴ・ゾスキュルテ [vu.zos.kyl.te]」と聞こえる点を押さえておきましょう。
鼻母音を含む医療用語(température / ordonnance):
🇯🇵 température [tɑ̃.pe.ʁa.tyʁ] の tem は、唇を閉じずに鼻へ音を抜く鼻母音 [ɑ̃](タン)です。英語の temperature のように「テンパレチャー」と発音すると全く通じないため、最後の音節 -ture [tyʁ](テュール)にしっかり重心を置いて発音してください。
英語では「My head hurts.」「I broke my leg.」のように my を使うため、フランス語でもつい ma tête や ma jambe と言いたくなりますが、これは最も多い不自然な直訳ミスです。
📌 ❌ NG例
J’ai mal à ma tête. / Je me suis cassé ma jambe.
🇯🇵 自分の頭・自分の脚であることは主語 Je から明らかなため、所有形容詞 ma を重ねると非常に不自然で幼い響きになります
📌 ⭕ OK例
J’ai mal à la tête. / Je me suis cassé la jambe.
🔈 ジェ マル ア ラ テット / ジュ ム スィ カセ ラ ジャンブ
🇯🇵 頭が痛いです。/脚の骨を折ってしまいました。
💡 「avoir mal à…」や代名動詞「se casser / se faire mal」の後ろでは、必ず定冠詞(le / la / l’ / les)を使います。
💡 ワンポイント解説(例外ルール):ただし、身体部位そのものが文の「主語」になる場合や、医療検査の数値・状態を主語にする場合は、所有形容詞(mon / ma / mes)を使います。たとえば「Mon nez coule.(鼻水が出る)」「Ma gorge est irritée.(喉が荒れている)」「Ma température est normale.(私の体温は平熱だ)」はすべて正しい自然なフランス語です!
結論から言うと、緊急時や重症でない限り、いきなり総合病院(hôpital)へ行くのはおすすめしません。 ① 軽い初期症状なら「薬局(pharmacie)」へ:喉の痛みや鼻水、軽い咳であれば、街の薬局で薬剤師(pharmacien / pharmacienne)に症状を伝えれば、よく効く市販薬を選んでくれます。 ② 高熱や長引く症状なら「一般開業医(médecin généraliste)」へ:処方箋や診断書が必要な場合は、医療予約アプリ「Doctolib」などで街の一般医を予約して受診しましょう。総合病院の救急外来(urgences)は命に関わる患者が最優先されるため、風邪で行くと何時間も待つことになります。夜間や休日にホテルで動けない場合は、往診サービスの「SOS Médecins」を呼ぶのが便利です。
Q2
「風邪(rhume)」と「インフルエンザ(grippe)」はフランス語でどう区別して伝えますか?
A
症状の中心が「鼻・喉」なのか、「急激な高熱・全身の関節痛」なのかで明確に使い分けます。 ① un rhume(風邪):くしゃみ(éternuer)、鼻水(le nez qui coule)、鼻詰まり(le nez bouché)、喉の痛みや軽い熱が中心の一般的な風邪です。症状が重い風邪でも「un gros rhume / un bon rhume」と呼びます。 ② la grippe(インフルエンザ):39度近い急な高熱(une forte fièvre)、激しい悪寒(des frissons)、全身の関節痛や筋肉痛(des courbatures)、強い倦怠感が一気に現れた場合はインフルエンザが疑われます。診察室では「Je pense que c’est peut-être la grippe, car j’ai une forte fièvre et des courbatures.(高熱と関節痛があるので、もしかするとインフルエンザかもしれません)」と伝えるとスムーズです。
Q3
医師に処方箋(ordonnance)をもらった後、お薬はどこで受け取りますか?
A
フランスは完全な医薬分業制となっているため、診察を受けたクリニックの窓口でお薬が渡されることはありません。 ① 薬局(pharmacie)へ処方箋を持参する:医師から受け取った処方箋(une ordonnance)を持って、街の緑十字マークの薬局へ行き、薬剤師に提出してお薬を購入します。 ② 保険請求用の書類を保管する:海外旅行保険やフランスの医療保険で後から払い戻し(還付)を受けるためには、医師の「診断書・領収書(または Feuille de soins)」に加えて、「処方箋のコピー(または原本)」と「薬局の領収書(薬の箱のバーコードシール等が必要な場合もあり)」がセットで必要になります。捨てずにすべて大切に保管してください。
Q4
フランスで救急車を呼ぶときの電話番号と、費用は本当に有料なのか教えてください。
A
緊急電話番号は「15番(SAMU)」または「112番(欧州共通)」で、搬送手段や保険の有無によって費用が発生する場合があります。 ① 緊急連絡先の使い分け:急病や医療的な緊急事態は「15番(SAMU:救急医療援助サービス)」、街中での事故や火災・救出を伴う救急は「18番(Pompiers:消防)」、どちらにすべきか迷ったときや携帯電話からは「112番(EU共通緊急番号・英語対応可)」へかけます。 ② 費用と保険カバー:医師の判断で出動する公的救急(SAMUや消防)とは別に、民間の救急車(ambulance privée)による病院間搬送や通院搬送などは有料となります。ただし、海外旅行保険に加入していれば治療費とあわせて救急搬送費用も補償対象となるのが一般的ですので、必ず保険会社の緊急アシスタンス窓口にも連絡を入れましょう。
診察の最初に「フランス語がまだ得意ではないこと」を正直に伝え、ゆっくり話すか紙に書いてもらうようお願いするのが一番のコツです。 ① ゆっくり話してもらう:「Excusez-moi, je ne parle pas très bien français. Pourriez-vous parler un peu plus lentement, s’il vous plaît ?(すみません、フランス語があまり上手に話せません。もう少しゆっくり話していただけますか?)」 ② 紙に書いてもらう:薬の飲む回数や病名が聞き取れなかったときは、「Pourriez-vous l’écrire sur un papier, s’il vous plaît ?(紙に書いていただけますか?)」とお願いしましょう。フランスの医師は外国人患者にも慣れており、処方箋(ordonnance)に「朝・昼・晩(matin / midi / soir)」と分かりやすくメモを書き添えてくれます。
Q6
海外旅行保険のキャッシュレス診療(現金不要)を使いたいときは、受診前にどうすればいいですか?
A
病院を予約する「前」に、まずご自身の海外旅行保険の24時間日本語サポートデスクへ電話(またはアプリから連絡)してください。 ① 提携病院の手配:保険会社が滞在先の近くにあるキャッシュレス提携クリニックや日本語通訳が手配できる医療機関を案内し、予約まで代行してくれるケースが多くあります。 ② 一般の開業医を受診する場合:自分で近くの医師(médecin généraliste)を予約して受診する場合は、一旦現地で診察料(通常26.50〜30ユーロ前後から)と薬代を立て替え払いし、記事の3-3でご紹介したフレーズを使って「保険金請求用紙(formulaire)への記入」と「診断書(certificat médical)」をもらえば、帰国後やオンラインでスムーズに全額請求できます。
体調を崩したときや怪我をしたときは誰しも不安になるものですが、「J’ai mal à…」「J’ai de la fièvre」といった基本表現と、この記事のフレーズ集が手元にあればもう大丈夫です。いざというときのお守りとしてこのページをブックマークし、安心で充実したフランス語圏での滞在を楽しんでくださいね。Prenez bien soin de vous !(どうぞお体を大切に!)