フランス語で感謝の気持ちを伝える基本は「Merci (メルシー)」。この一言だけでも気持ちは伝わりますが、もっと具体的に「何に対して」感謝しているのかを伝えたい時や、より丁寧に、あるいはもっと深く感謝の意を示したい時、どう表現すれば良いのでしょうか?
「プレゼントをありがとう」「手伝ってくれてありがとう」「先日はありがとうございました」…。日本語なら自然に出てくるこれらの表現も、フランス語で言おうとすると少し迷ってしまうかもしれません。
この記事では、基本的な「Merci」の復習から始め、感謝の対象を明確にする「Merci pour + 名詞」と「Merci de + 不定詞(過去形)」の詳しい使い方、さらには様々な感謝のニュアンスを表すフレーズ、そして感謝に対するスマートな返し方まで、フランス語の「ありがとう」を徹底的に解説します。例文や注意点も豊富に盛り込みましたので、ぜひ最後まで読んでマスターし、あなたの感謝の気持ちを豊かに伝えましょう!
感謝を深める!フランス語で「ありがとう」を上手く伝える方法 – Merci Pour/De の使い方と返し方
目次
基本のMerci(メルシー)をおさらい
まずは、フランス語の感謝の基本である「Merci」について簡単におさらいしましょう。
- Merci (メルシー): 「ありがとう」「ありがとうございます」。最も一般的で、どんな相手・状況でも使える基本形。
- Merci beaucoup (メルシー ボクー): 「どうもありがとう」「本当にありがとう」。感謝の気持ちを強調したい時に。「beaucoup(たくさん)」を付け加えます。
- Mille mercis (ミル メルシー): 「心からありがとう」「多大な感謝を」。直訳は「千の感謝」。「Merci beaucoup」よりもさらに強い感謝を表します。
- Je vous remercie. (ジュ ヴ ルメルシー): 「(あなたに)感謝いたします」。動詞「remercier(感謝する)」を使った丁寧な表現。目上の人やフォーマルな場面に適しています。親しい相手(tu)には「Je te remercie. (ジュ トゥ ルメルシー)」となります。
基本的な感謝はこれらの表現で伝えられますが、次に「何について」感謝しているのかを具体的に伝える方法を見ていきましょう。

「Merci」は基本中の基本!笑顔で伝えよう
具体的に感謝!「Merci pour + 名詞」の使い方
「プレゼントをありがとう」「情報をありがとう」のように、感謝の対象が「物」や「事柄」(名詞)である場合は、前置詞「pour (プール)」を使って表現します。
Merci pour + [名詞]
[名詞] をありがとう。
Je vous remercie pour + [名詞]
[名詞] をありがとうございます。(丁寧)
「pour」の後には、具体的な物だけでなく、抽象的な名詞(助け、親切、情報、時間など)も置くことができます。名詞の前には、冠詞(le, la, les, un, une, des)や所有形容詞(mon/ma/mes, ton/ta/tes, son/sa/ses, notre/nos, votre/vos, leur/leurs)が付くことが一般的です。
「Merci pour + 名詞」の例文
Merci pour le cadeau. (メルシー プール ル カドー)
プレゼントをありがとう。
Merci pour votre aide. (メルシー プール ヴォートル エード)
(あなたの)手助けをありがとう。(丁寧)
Merci pour ton aide. (メルシー プール トン ネード)
手伝ってくれてありがとう。(親しい相手)
Merci pour l’invitation. (メルシー プール ランヴィタシオン)
招待(状)をありがとう。
Merci pour votre gentillesse. (メルシー プール ヴォートル ジャンティイェス)
ご親切にありがとう。
Merci pour tout. (メルシー プール トゥ)
いろいろとありがとう。/ 全てに感謝します。
Merci pour aujourd’hui. (メルシー プール オージュルデュイ)
今日はありがとう。
Merci pour l’autre jour. (メルシー プール ロートル ジュール)
先日はありがとう。
Merci pour la lettre. (メルシー プール ラ レットル)
手紙をありがとう。
Merci pour l’information. (メルシー プール ランフォルマシオン)
お知らせ/情報をありがとう。
Je vous remercie pour votre patience. (ジュ ヴ ルメルシー プール ヴォートル パスィヤンス)
お待ちいただきありがとうございます。(あなたの忍耐に感謝します)
「あなたの/君の〜」と言う場合、相手が目上の人や初対面の人、複数の場合は「votre/vos」、親しい友人や家族(単数)には「ton/ta/tes」を使います。

Merci pour le cadeau! (プレゼントありがとう!)
行為に感謝!「Merci de + 不定詞(過去形)」の使い方
「来てくれてありがとう」「手伝ってくれてありがとう」のように、相手の具体的な「行為」に対して感謝を伝えたい場合は、前置詞「de (ドゥ)」と動詞の不定詞(原形)を使います。ただし、ここが少し複雑なポイントです!
すでに行われた過去の行為に対して感謝を述べる場合、不定詞の部分を過去の形(不定詞過去)にする必要があります。
Merci de + [不定詞過去 (avoir/être + 過去分詞)]
〜してくれてありがとう。
Je vous remercie de + [不定詞過去 (avoir/être + 過去分詞)]
〜してくださりありがとうございます。(丁寧)
不定詞過去は、助動詞「avoir」または「être」の不定詞形に、過去分詞を組み合わせた形です。どちらの助動詞を使うかは、元の動詞によって決まります(複合過去のルールと同じです)。
1. 助動詞が être の場合:「Merci d’être + 過去分詞」
主に移動や状態変化を表す動詞(venir, aller, arriver, partir, entrer, sortir, rester, naître, mourir など)や代名動詞は、助動詞に「être」をとります。この場合、過去分詞は、感謝を伝える相手(=動作の主語)の性・数に一致させる必要があります。
例:「来る (venir)」→ 過去分詞 venu
Merci d’être venu. (メルシー デートル ヴニュ) – 来てくれてありがとう。(相手が男性単数)
Merci d’être venue. (メルシー デートル ヴニュ) – 来てくれてありがとう。(相手が女性単数)
Merci d’être venus. (メルシー デートル ヴニュ) – 来てくれてありがとう。(相手が男性複数、または男女混合)
Merci d’être venues. (メルシー デートル ヴニュ) – 来てくれてありがとう。(相手が女性複数)
※発音は基本的に同じです。書く時に注意が必要です。
例:「とどまる (rester)」→ 過去分詞 resté
Merci d’être resté(e) si tard. (メルシー デートル レステ シ タール) – こんなに遅くまで残ってくれてありがとう。
2. 助動詞が avoir の場合:「Merci d’avoir + 過去分詞」
être を助動詞にとる動詞以外は、基本的に助動詞に「avoir」をとります。通常、avoir を使う複合過去では過去分詞の性数一致は起こりませんが、直接目的語が動詞の前に置かれている場合には、その直接目的語と過去分詞の性・数を一致させるというルールがあります。
「Merci de + 不定詞過去」の構文でも、このルールが適用される場合があります。少し複雑なので、まずは例文で確認しましょう。
例:「助ける (aider)」→ 過去分詞 aidé
Merci de m’avoir aidé. (メルシー ドゥ マヴォワール エデ) – 私を助けてくれてありがとう。(私が男性の場合)
Merci de m’avoir aidée. (メルシー ドゥ マヴォワール エデ) – 私を助けてくれてありがとう。(私が女性の場合)
※直接目的語「m’ (me = 私を)」が助動詞 avoir の前にあるため、過去分詞 aidé は「私」の性(話し手が男性なら無変化、女性なら -e をつける)に一致します。
例:「招待する (inviter)」→ 過去分詞 invité
Merci de nous avoir invités au dîner. (メルシー ドゥ ヌザヴォワール アンヴィテ オ ディネ) – 私たちを夕食に招待してくれてありがとう。(私たちが男性複数または男女混合)
Merci de nous avoir invitées au dîner. (メルシー ドゥ ヌザヴォワール アンヴィテ オ ディネ) – 私たちを夕食に招待してくれてありがとう。(私たちが女性複数)
※直接目的語「nous (私たちを)」が前にあるため、過去分詞 invité は「私たち」の性数に一致します。
例:「買う (acheter)」→ 過去分詞 acheté
Merci d’avoir acheté des chocolats. (メルシー ダヴォワール アシュテ デ ショコラ) – チョコレートを買ってくれてありがとう。
※直接目的語「des chocolats」が動詞の後ろにあるため、過去分詞は一致しません。
Merci de les avoir achetés. (メルシー ドゥ レザヴォワール アシュテ) – それら(チョコレート)を買ってくれてありがとう。
※直接目的語「les (それらを)」が前にあるため、過去分詞 acheté は「les = chocolats(男性複数)」に一致して「achetés」となります。
Merci d’en avoir acheté. (メルシー ダンナヴォワール アシュテ) – (それをいくつか)買ってくれてありがとう。
※中性代名詞「en」が前にある場合は、例外的に過去分詞は一致しません。
この性数一致のルールはフランス語文法の中でも難しい部分です。初心者のうちは、よく使う「Merci d’être venu(e).」や「Merci de m’avoir aidé(e).」などをフレーズとして覚えてしまうのが良いでしょう。発音上はほとんどの場合、性数一致による変化はありません。

行為への感謝は「Merci de + 不定詞過去」で表現
注意!「Merci de + 不定詞(現在形)」は依頼の意味
「Merci de + 不定詞」の形で、不定詞が現在形のまま使われることがあります。この場合は、「~してくれてありがとう」という感謝ではなく、「(これから)~してください」という丁寧な依頼や指示の意味になります。特に公共の場でのアナウンスや注意書きなどでよく見られます。
注意が必要な例
Merci de patienter. (メルシー ドゥ パスィヤンテ)
お待ちください。
※電話の取り次ぎや受付などで「お待ちください」の意味。
Merci d’avoir patienté. (メルシー ダヴォワール パスィヤンテ)
お待ちいただきありがとうございます。
※待ってもらった後のお礼。
Merci de ne pas fumer ici. (メルシー ドゥ ヌ パ フュメ イシ)
ここでは禁煙にご協力ください。
過去の行為への感謝を伝えるつもりが、うっかり不定詞を現在形のままにしてしまうと、相手に「~しろと言っているのか?」と誤解を与えかねません。助動詞「avoir / être」を忘れないように注意しましょう。
色々な場面での「ありがとう」
SNSでの「ありがとう」
SNSでフランス語話者と交流する際に使える表現です。
Merci de me suivre. (メルシー ドゥ ム スュイーヴル) – フォローしてくれてありがとう。
Merci pour ton/votre commentaire. (メルシー プール トン/ヴォートル コマンテール) – コメントありがとう。
Merci pour le like ! (メルシー プール ル ライク !) – いいねありがとう!
略語・スラングの「ありがとう」
- 略語 (テキスト): 親しい間柄のメールやSMSでは「Merci」を「Mci」と略すことがあります。ビジネスやフォーマルな場面では絶対に使わないようにしましょう。
- スラング: かつて若者言葉で「Merci」を逆さ読みした「Cimer (シメール)」というスラングがありましたが、現在は古臭い印象を与える可能性があります。学習者は使わない方が無難です。
その他の感謝に関連する表現
- C’est (très) gentil (de votre/ta part). (セ (トレ) ジャンティ (ドゥ ヴォートル/タ パール)) – ご親切にどうも。 / (親切な行為に対して)ありがとう。
- Je vous/te suis (très) reconnaissant(e). (ジュ ヴュ/トゥ スュイ (トレ) ルコネッサン(ト)) – (あなたにとても)感謝しています。 (reconnaissant = 感謝している(形容詞、性数一致あり))
- Avec tous mes remerciements. (アヴェック トゥ メ ルメルスィマン) – 心からの感謝を込めて。(手紙やメールの結び)
「ありがとう」への返事:どういたしまして / こちらこそ
「Merci」と言われた時に、スムーズに返事ができると素敵ですよね。フランス語の「どういたしまして」や「こちらこそ」の表現を覚えましょう。
「どういたしまして」の定番
De rien.
(ドゥ リアン)
どういたしまして。 / いいえ。
最も一般的で、覚えやすく、どんな相手にも気軽に使える定番の返事。「rien」は「何も~ない」という意味で、「お礼を言われるようなことは何もしていませんよ」というニュアンス。
Je vous en prie. (丁寧)
(ジュ ヴ ザン プリ)
Je t’en prie. (親しい相手)
(ジュ トン プリ)
どういたしまして。
「De rien」よりも丁寧で上品な印象を与える表現。「prier(祈る、願う)」を使った言い回しです。
その他の「どういたしまして」
状況や相手に応じて、以下のような表現も使われます。
Il n’y a pas de quoi. (イル ニャ パ ドゥ クワ)
お礼には及びませんよ。/ 大したことではありません。
「De rien」より少し丁寧。
Ce n’est rien. (ス ネ リアン)
大したことないよ。
口語では「C’est rien. (セ リアン)」と「ne」を省略することも(ややくだけた表現)。
Pas de problème. / Pas de souci. (パ ドゥ プロブレム / パ ドゥ スシ)
問題ないよ。/ 気にしないで。
カジュアルな表現。「souci」は「心配事」。
Avec plaisir. (アヴェック プレズィール)
喜んで。
「手伝えて嬉しい」という気持ちを表す、ポジティブな返事。
C’est tout à fait normal. (セ トゥ タ フェ ノルマル)
当たり前のことです。
Ce n’est pas grand chose. (ス ネ パ グラン ショーズ)
大したことではありません。
「こちらこそありがとう」と返したい時
相手への感謝の気持ちを伝え返したい場合は、以下の表現を使います。
C’est moi qui vous remercie. (丁寧)
(セ モワ キ ヴ ルメルシー)
C’est moi qui te remercie. (親しい相手)
(セ モワ キ トゥ ルメルシー)
こちらこそ(私の方こそ)ありがとうございます。
強調構文「C’est … qui ~」を使い、「感謝するのは(あなたではなく)私の方です」という意味を表す丁寧な言い方。口語では「C’est moi.」と略すこともありますが、かなりカジュアルです。
Merci à vous. (丁寧)
(メルシー ア ヴ)
Merci à toi. (親しい相手)
(メルシー ア トワ)
(私からも)あなたにありがとう。
シンプルで覚えやすく、使いやすい表現です。「Merci à vous/toi aussi. (…オッスィ – ~も)」と「aussi」を付けることもあります。
あるいは、シンプルに「Merci」と返すだけでも、「こちらこそ」のニュアンスが伝わる場合もあります。

場面に合わせて「どういたしまして」「こちらこそ」を使い分けよう
フランスの感謝文化と練習のヒント
- 感謝はしっかり伝える: フランスでは、親切にしてもらったり、サービスを受けたりした際に、「Merci」としっかり伝えることが大切です。無言は失礼と受け取られることもあります。
- 「すみません」で代用しない: 日本語では軽い感謝を「すみません」で表すことがありますが、フランス語の「Pardon(パルドン)」や「Excusez-moi(エクスキュゼ モワ)」は謝罪の意味合いが強いので、感謝の場面では使いません。
- 贈り物へのお礼: プレゼントをもらった際は、その場で開けて喜びと感謝を表現するのが一般的です。「Merci pour ce beau cadeau! Il me plaît beaucoup! (素敵なプレゼントありがとう!とても気に入りました!)」のように、具体的に褒めると良いでしょう。
- 繰り返し練習: 覚えたフレーズは、声に出して何度も練習しましょう。特に「Merci de + 不定詞過去」の構文は、最初は口が慣れないかもしれません。
- 場面を想像する: 「レストランで」「お店で」「友達の家で」など、具体的な場面を想像しながら、適切な感謝の言葉と返事をシミュレーションしてみましょう。
まとめ:Merciのバリエーションで感謝の気持ちを豊かに伝えよう!
フランス語の「ありがとう」は、基本の「Merci」に加えて、「Merci pour + 名詞」や「Merci de + 不定詞過去」を使うことで、何に対する感謝なのかを具体的に伝えることができます。特に「Merci de + 不定詞過去」は、性数一致などの文法ルールが少し複雑ですが、使いこなせればより丁寧で自然なフランス語になります。
また、「どういたしまして」の「De rien」や「Je vous en prie」、「こちらこそ」の「C’est moi qui vous remercie」や「Merci à vous」といった返事の表現もマスターして、スムーズなコミュニケーションを目指しましょう。
最初は難しく感じるかもしれませんが、まずは簡単なフレーズからで大丈夫です。大切なのは、感謝の気持ちを相手に伝えようとすること。この記事を参考に、様々な「ありがとう」を練習し、自信を持ってフランス語で感謝を伝えてみてくださいね!